第33話あいきゃんふら〜い!!!
「さてさてぇ…お二人さ〜ん?これから楽しい楽しい肝試しの始まりだぁ!!」
「清水うるさいぞ」
俺は1人盛りあがっている清水の脳天に向けてチョップをかました。
「あいた!…むぅ、すまん」
「全く…それにしても…」
俺は先程から綾瀬さんにすがりついている水瀬さんを見た。
「おー、よしよし。大丈夫だよ〜怖くないよ〜」
「無理無理無理無理無理…!お化け!無理!断固拒否です!」
「大丈夫だって、出てきても花音ちゃんなら倒せるよ!」
「うぅ…幽霊に物理攻撃効くんですか?大外刈出来ますか?」
「う〜ん。大外刈出来るかは分からないけど、背負い投げくらいなら…」
いや、さすがに無理だろうよ。
てか、水瀬さんは幽霊を倒す気なの?
もう、怖いのか戦いたいのか全然分かんなくなってきたぞ…
「ま、みんな盛り上がってるようだしパートナーはくじ引きで決めるか!」
おいコラ清水。どこが盛り上がってるように見えるんだよ。俺は幽霊よりお前の方が怖いよ。
そして、皆でくじを引いたところ…
「メンバーは俺と陽菜ちゃん。真琴と水瀬さんか…いい感じだな!」
「そうだね!ほら、花音ちゃん。引っ付くのは
「うぅ…!和泉さ〜ん!」
と、水瀬さんは半泣きの状態でキョンシーの様に手を前に出しながらこちらに向かってきた。
「えぇっと…ほら〜こっちだよ〜…」
俺は軽く手を叩きながら水瀬さんを迎え入れた。
「よし!じゃあ、先に俺と陽菜ちゃんで行くから2人は10分くらいしたら出発してくれ。それと、ちゃんと向かった事を確認するためにこのクマのぬいぐるみを置いておくからそれを回収してここに帰ってくる。いい?」
「了解だ。水瀬さんは…」
俺が服の裾を掴んでいる水瀬さんの方を向くとコクコクと頷いていた。
「了解だってさ」
「よし!じゃあ出発〜!」
「お〜!」
そういい2人は出発した。
「ったく、あの二人は元気だな〜」
と、俺が呟くと水瀬さんが話しかけてきた。
「あ、あの…」
「ん?どうしました?」
「先程清水さんが言ってたのは本当なんでしょうか…?」
「あぁ、お菊さんの話しですか」
そう、肝試しをする前に清水が俺が下見に行ってる時に聞いた話を綾瀬さんと水瀬さんに話したのだが…無駄に脚色をしたせいで水瀬さんはかなり怖がってしまって今の状態になったのだ。
「はい…もし本当なら私海に引きづりこまれるんじゃ…」
うん。本当に盛りやがったなあいつ。
「大丈夫ですよ。幽霊の正体見たり枯れ尾花。目の錯覚ですから」
「で、ですよね!幽霊なんて居ませんよね!」
「…多分ですけど」
「多分!?今多分って言いました!?」
「あはは!本当に大丈夫ですから安心して下さい。チラッと清水と見てきましたが全然普通でしたから」
「うぅ…和泉さんは少し意地悪さんですね」
「まぁ、水瀬さんが普段完璧なのでこういう姿を見ると少し弄りたくなってしまって。悪気は無いんですよ?」
「悪気と悪意しか感じませんよ!」
「まぁまぁ落ち着いてください。それにしても幽霊が苦手なんて意外でしたよ」
普段は料理、洗濯、家事なんでもござれの完璧超人なのに幽霊が苦手とは…
「…昔おばあちゃんに言われてたんです。言うこと聞かないと
「あもこ?なんですか、それ?」
「えっと…方言でして、お化けや幽霊って意味なんです」
「へぇ…」
「それで私が言うこと聞かないとお父さんやお母さんがあもこも格好をして驚かせてきて…それ以来苦手になったんです」
「なるほど…そうでしたか」
「…はい」
そう話していると俺のスマホが10分経ったことをアラームで告げてきた。
ピピピピピ…!
「ひいっ!」
「お、10分経ったか。そろそろ行きましょうか」
「全力でお断りしたいですが…1人残る方が怖いので頑張ります」
そういい俺と水瀬さんも神社に向けて出発したのだった。
道を歩き始めると自然豊かだからか色々な虫の声が聞こえてくる。
その中をコツコツと音を立てながら俺と水瀬さんは歩いていた。
「い、和泉さん。今何か声が…」
「あぁ。これは多分動物の声ですよ」
「ひいっ!い、今あそこ動きませんでした!?」
「お、たぬきですよ。意外と可愛いな…」
「わぁ!い、今私の近くを影が通りましたよ!?」
「あれは…コウモリですね。大丈夫です。襲っては来ませんから」
などと、水瀬さんは森に入ってから絶好調だ。
「うぅ…は、離れないでくださいね?離れたら私泣きますよ?」
「大丈夫ですよ。ゆっくり歩きますから」
「…はい」
そうして歩いていると段々と目的の神社が見えてきた。
「そろそろ着きそうですよ」
「…私は見ません。下しか見えません」
と、断固拒否の水瀬さん。
俺は少し苦笑しながら神社へと向かった。
そして、お賽銭箱だろうか。その上にちょこんとクマのぬいぐるみが置いてあった。
「お、これか」
俺はぬいぐるみを手に取り水瀬さんに渡した。
「怖いならこれを抱きしめてれば良いですよ」
「…ありがとうございます」
と、水瀬さんは弱々しい声音でぬいぐるみを受け取りギュッと抱きしめた。
「じゃあ、戻りましょうか」
「…はい」
そして俺と水瀬さんは先程通った道とは違う道を歩き始めた。
ホー…ホー…ホー…
「フクロウですかね、この鳴き声」
「そ、そうですね!フクロウですね!」
俺は水瀬さんがあまり怖がらないようにする為に話しかけていたが…ここで事件は起きた。
「きゃぁぁぁぁぁあ!」
「…!?」
水瀬さんは急に叫び出しダッシュし始めた。
「ちょ!水瀬さん!?」
「無〜理〜で〜す〜!!!」
は、早い!何だこの速さは!
しかも…
「水瀬さん!その道は違いますよ!!」
水瀬さんは前を見ていないのか変な道へと全力で走った。
「…ちっ!社畜の体力舐めんなよ!」
伊達に営業で歩き回ってないぞ!
俺は全力で走り水瀬さんの腕を掴んだ。
「ゲットだぜ!!…っあ」
「無〜理〜!…ふぇ?」
気が付けば俺と水瀬さんは空中に浮いていた…。
「わあぁぁぁぁぁあ!」
「きゃぁぁぁぁぁあ!」
そして、俺と水瀬さんは崖に向かって落ちた。
その際俺は咄嗟に水瀬さんを抱きしめなるべく怪我をさせないように斜面を転がり落ちたのだった。
全身に衝撃を受けること約10秒程…何とか止まった。
「痛っててて…っ!水瀬さん!大丈夫ですか!?」
俺は水瀬さんの無事を確認するために見ると…
「きゅ〜…」
と、目を回しながらぬいぐるみを抱きしめている水瀬さんがそこに居た。
「良かったぁ…」
俺は息を深く吐きながらそう言った。
それから数分して、水瀬さんも意識を取り戻した。
「あれ…ここは…?」
「あ、起きましたか?」
「和泉…さん?」
「はい、和泉です。その前に…これ、何本に見えますか?」
俺は右手で三本指を立てた。
「えっと…三本ですね」
「うん。大丈夫そうですね」
「は、はい…痛っ!」
水瀬さんは立ち上がろうとしていたが左足を抑えた。
「大丈夫ですか!?」
「は、はい…少し挫いてしまったみたいです」
「なるほど…ちょっと見せて下さい」
「…はい」
水瀬さんは挫いた足を見せてきた。
俺は水瀬さんに断りを入れ足を触ったが、どうやら折れてはいないらしい。
「うん。軽い捻挫ですね。歩くのは…無理そうですね」
「す、すみません…」
「大丈夫ですよ。よし!じゃあ、おんぶしますので背中に乗って下さい」
「え…でも…」
「俺は平気ですよ。それより早く戻らないと清水達が心配しちゃいますからね」
「…分かりました」
そうして俺は水瀬さんをおんぶして歩き始めた。
「お、重くないですか?」
「大丈夫です。心配になるほど軽いですよ」
「うぅ…恥ずかしいです」
「少しだけ我慢して下さいね」
「…はい。我慢します」
そうして俺と水瀬さんは落ちた崖を迂回しながらペンションへと戻った。
「お!2人とも遅いぞって…どうした!?ボロボロじゃねーか!」
「ははっ…ちょっとな…それより水瀬さんの手当を頼む」
「お、おぅ…」
「花音ちゃん!大丈夫!?」
「陽菜ちゃん…大丈夫だよ。少し足くじいちゃったけど…あはは」
「笑い事じゃないよ!すぐ手当するから!」
「ありがとう、陽菜ちゃん」
俺はペンションの中に入りリビングにあるソファーに水瀬さんを座らせ俺は清水と外に出た。
「ちょ、何があったんだよ真琴」
「崖からバンジーした」
「…何してんだよ」
「…すまん」
「別に責めてねぇよ。それより真琴は大丈夫なのか?かなり泥んこだけど…」
「平気平気。社畜、身体、強い」
「なんでカタコトなんだよ…はぁ。ま、とりあえず…無事で何よりだよ」
「おうよ」
そういい俺と清水は水瀬さんの手当が終わるまで外に居たのだった。
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皆様!おはこんばんにちわ!
青の空です!
…飛びましたね。
皆様も紐なし崖バンジーは気をつけて飛んでくださいね!
さて!今回も嬉しいことに☆が増えておりました!
☆をくれた…
下端野州広 さん
@iyorin さん
本当にありがとうございます!!!
それとブクマ数が遂に410人になりました!
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