第21話いや、あの。すみませんでした

さて、会社で仮眠を取った後部長にしっかりと話は通したので俺と清水は時間どうりに退社した。


「さて、明日はどこ集合だ?」


と、清水が聞いてきたが…考えてなかった為。


「あ〜…家に帰ったら連絡してみるからそれまで待ってといて」


「了解」


そして俺は電車に揺られもう何日かぶりの家に帰ってきた。


「はぁ…なんか泣けてきた…」


そんなことを言いつつ俺は家に入り、お風呂に入った。


一応会社にもシャワールームがあるので毎日シャワーは浴びていたがやっぱり日本人足るものお風呂よお風呂。

俺はお湯を貯めた湯船に入れると温泉と同じ効能になる粉を入れ…浸かった。


「はぁぁぁぁ〜…」


水の『ざぁぁぁあ…』と流れ落ちるこの音ですら俺の心を癒してくれる。


もう、タイピングの音なんて聞きたくない…


そして大体30分程のんびりしお風呂から上がると携帯に一通のメールが来ていた。


『お疲れ様です。和泉さん、私の家集合です』


俺はそれを確認して初めは誰かと思ったがメールアドレスが水瀬さんだった為、俺は…


『お疲れ様です。分かりました。19時30分頃に向かいますね。』


と、返信した。


そして時刻は19時15分。

俺は急いで髪を乾かし着替えをして自分の家を出た。

そしてお隣の水瀬さんの家の前に立ちインターホンを押すと…すぐに水瀬さんが出てきた。


「………どうぞ」


「え、あ、はい」


あれ?おかしい…いつもなら元気よく出迎えてくれるのに。


俺は少し違和感を感じつつも水瀬さんのお宅にお邪魔するのだった。


そしていつものテーブルに腰掛けると水瀬さんは冷えた麦茶を出してくれた。


「ありがとうございます」


「…いえ」


「えっと…」


き、気まずい…。

さて、考えろ俺の脳!俺は何をしたんだい!?


『告、仕事しかしてません』


だよね!仕事しかしてないよね!それで怒る要素なんで…あ、バリバリあるわ。


俺が導き出した答え。それは…。


「水瀬さん」


「…何でしょう」


「ご心配をお掛けしました…」


そう言い俺は頭を下げた。


「折角ご飯のお誘いもしてくれてたのに5日間も返信が無かったら怒りますよね。本当にごめんなさい…」


俺は深く頭を下げた。しかし、水瀬さんは…


「…違います。怒ってなんか…いません。ただ、連絡しても連絡しても…返事がなくて。家に行っても気配が無くて。それに、それに…あぁ、もう!」


バン!と水瀬さんは軽くテーブルを叩きこう言った。


「ご飯食べましょう!今日は和泉さんにも手伝って貰いますからね!」


俺はその勢いに押されこういうしか無かった。


「は、はい…喜んで…」


「じゃあ、米を研いでください!」


「りょ、了解!」


そして俺が米をといでいる間水瀬さんは冷蔵庫から豚バラ肉とキムチを取り出した。


「もう、今日はヤケ食いしますから和泉さんもいっぱい食べて下さいね!」


「はい。いっぱい食べます」


「残しちゃダメなんですから」


「…はい」


「…無理しちゃ、ダメ…なんですから」


「…ごめんなさい」


俺は水瀬さんが泣いているのに気づいた。

しかし、俺にはどうしようもない。だって、水瀬さんはそっぽを向いているのだから。

きっと、本人は気づいて欲しくないのだろう。

だから俺は米を研ぐ音をわざと大きくした。彼女の嗚咽が聞こえないように…。


そしてその後2人で四合の大食いをした後俺が洗い物を終えリビングに戻ると水瀬さんは『こっくり…こっくり…』と、頭を揺らし船を漕いでいた。


「み、水瀬…さん?」


俺がそう声をかけると水瀬さんは薄らと目を開け自分が座っているソファーの隣をポンポンと叩いた。


「座れって、ことですか?」


俺がそう聞くと無言で頷いた。


「分かりました…じゃあ、失礼して…」


そして俺が隣に座った瞬間…水瀬さんはポスン…と俺の膝の上に頭を乗せた。


「ちょ…!み、水瀬さん!?」


と、俺が暴れそうになった瞬間…俺の目にあるのものがうっすらと見えた。

それは…メイクで隠しているが…先程泣いてしまったからであろう、水瀬さんの目の下にクマがあるのに気づいた。


「ふぅ…」


俺は1つ、息を吐いた。

そして水瀬さんが起きないように呟く。


「これ程心配かけてたなんて…申し訳無いことしたな…」


そして、俺は近くにあったブランケットを取り水瀬さんにそっとかけてあげた。


「よしっと…」


俺は天井を見上げた。

まぁ、社会人になって…仕事と家の往復生活。親とも離れ一人暮らし。昔の友達ともなかなか会えず疎遠になり、家だといつも孤独を感じて居たのに…今じゃあ水瀬さんが居ると考えるとどうしてか心が温かくなり頑張ろうって思える。


「うわぁ…泣きそ。でも、我慢我慢…」


まぁ、男の謎なプライドではあるが…水瀬さんだってあまり泣かないように頑張ったのだ。ここで俺が泣いちゃダメな気がするのだ。


そう、考えていると水瀬さんは何かの夢を見ているのだろうか。

それはよく分からないが、俺の服を『キュッ…』と離れないように掴んできた。


「ふむ…」


それを感じた俺にある欲求が芽生える。

それは…


「頭を撫でても良いだろうか…」


いや、あれだよ?やましい気持ちなんて全然ゼーンゼン、ナイヨ?

いや、ほら俺…犬ポジだし?たまには労りたいというか…ね?今なら行けるか?うーん、まぁ、本人も寝てるし…少しだけなら…。


俺は覚悟を決め…俺の膝の上に乗っている水瀬さんの頭を優しく…優しく撫でた。


「おぉ…めっちゃ触り心地いいな」


サラサラとした黒髪。それはまるで極上の絹のようで今までにない感触だった。


そして俺は頭を撫でながら水瀬さんが起きないぐらいの声量で…


「ありがとうございます」


と、呟くのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


皆様!おはこんばんにちは!

青の空です!


ふぅ…。朝から甘々にしてやったぜ。…へへ。

まぁ…和泉さんが羨ましいですね!

こんな人作者には……うん。


はい!と、言うわけでまた嬉しいことに☆が増えておりました!

そして、その☆をくれた…


八雲紫櫻 さん!


ありがとうございます!!

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