第七十八夜 バナナ

 数年前、Uさんの親友は交通事故でこの世を去った。まだ二十二歳という若さだった。

 ふたりは小学生の時からずっと一緒につるんでいたため、お互いのどんなこともよく知っていた。

 ある盆のこと。Uさんがその親友の仏壇に線香をあげに行くと、そこには当時好きだったビールやフルーツがたくさん供えられていた。しかし、よく見ると、様々なフルーツが入っているカゴにはバナナも入っている。親友は子供の時からバナナが大の苦手だった。きっと親類がそれを知らずに差し入れたのだろう。

「おばさん、あいつバナナ食うの?」

 Uさんがそう訊くと、親友のお母さんは麦茶を注ぎながらこう言った。

「不思議なことにね、他の果物は時間が経つと傷んでいってしまうのに、一番腐りやすいバナナだけはずっとピカピカの黄色のままなのよね。きっと、あの子バナナが大嫌いだったからあっちでも食べないみたい。よかったら食べて?」

 どうやら向こうでも好き嫌いしているらしい、とUさんは笑って話してくれた。


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