第三十六夜 黒電話
Nさんが友人のアパートに遊びに行った時の話である。
深夜までふたりで酒を飲み、その流れで一泊して眠っていた時のこと。Nさんはふと目が覚めた。部屋のどこかで黒電話がリーンと、大音量で鳴り響いていたのである。友人の携帯のアラームが鳴っているのだろうか? そう思い、ベッドに寝ていた友人を蹴飛ばした。
「おい、アラームうるさいぞ」
すると、友人もその音には気付いていたようで、苛立った声で返した。
「は? お前の携帯だろ? 早く止めろよ」
黒電話の鳴る音は鳴りやまない。お互いに携帯を確認したが、そもそもアラームは作動していないのである。
ふたりは不思議に思って音の鳴る方向を調べてみると、どうやら床の方から聞こえてくるようだった。
「下の階の奴が大音量で流してんのか? 迷惑な奴だな」
Nさんが文句を言いだすと、友人は何も言わず立ちすくんだまま動かない。
「どうした?」
Nさんの問いかけに、友人は震える声でこう答えた。
「寝ぼけてんのか? 俺の部屋、一階だぞ?」
その瞬間、黒電話の音はピタッと鳴りやんだという。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます