第53話 フェリサ女学院の写真部

 写真部の四人は放課後に。いつもの様に喫茶「純」に来た。

「マスター、今日は」

「いらっしゃい、伏見君、松本君、鎌倉さん、お帰り幸乃、好きな席に座ってね。松本君、伏見君、あの壁に飾った写真ね、とっても評判が良いんだよ」

見とれる男の子もいれば、女の子までいるんだよ」


 鎌倉美月は二人をみて嬉しくなった。

「蓮、海斗、写真が評価されて良かったね」

「まあ、俺はともかく、写真の好きな蓮が評価されると言うのは嬉しいね」

 森幸乃は嬉しそうに言った。

「私もお手伝いをしている時にあの写真のモデルですか、って聞かれた事があるのよ。キャー恥ずかしい、私をモデルとか言うんだから」

「私も二人の写真が評価されると、自分の事のように嬉しく感じるのよね」

 マスターも嬉しかった。

「私は幸乃の写真が、気に入っているんだ。綺麗に撮ってくれて有り難う」

「いや~、俺のは偶然ですよ。そもそも風が無かったら、あの写真は撮れなかったもんな」

「なあ海斗、運も実力のうちって言うだろ、日差しの強い陰と海風を捕らえる事が出来たのは実力なんだよ。それに幸乃さんの髪が、葵ちゃんの様に短かったら、風を表現するものはスカートだけだろ、いくつもの偶然が重なっているんだよ。俺の写真も、撮ろうと思って花火を用意した訳じゃ無くて、あっ、この光と陰が絵になるなって思えたから撮った写真なんだよ。恐らく俺のは女の子が一人じゃ、ダメなんだ。皆が楽しい表情をしているのが、良かったんだと思うんだ」

「そうか、そうかもね。俺も幸乃さんを撮った時は、あっ絵になるなって思ったから撮ったんだよ。俺の写真も実力のうち、なんだね」


 皆はうなづいた。すると二人の女子高生が海斗達に歩み寄った。

松本蓮は鎌倉美月を、海斗は森幸乃のと顔を見合わせ、経過を待った。

「済みません、私、フェリサ女学院・高等部の稲垣京香と申します。ご機嫌よう」

「同じくフェリサ女学院、桜井メイと申します。ご機嫌よう」

海斗達は次の展開が、誰に来るのかドキドキした」


 稲垣京香は慎重に話し始めた。

「急に話しかけて済みません。私達は写真部に入っていて、ここに素敵な写真が有ると聞いて見に来たんです。盗み聞きをするつもりは無かったのですが、偶然会話を聞いてしまい、声をかけてしまいました」

 桜井メイは緊張して、重い口を開いた

「運も実力のうちと聞きました。折角、会えた運を逃したら二度と会えないと思い二人で勇気を出して声を掛けさせて頂きました。本当に、どちらも素敵な写真ですね」


 海斗と松本蓮は鼻の下をのばした。鎌倉美月は頬を膨らまし松本蓮の腰をつねった。稲垣京香は感想を伝えた

「この写真を見て感動しました。私達も見ているだけでワクワクする様なステキな写真を撮ってみたいのです。どうか指導をして頂けませんか」

 桜井メイも続けた。

「ウチは女子校なので、学校に呼ぶことは出来ません。出来れば校外で、ご指導頂けませんか」


 松本蓮は鎌倉美月に気を遣かった。

「褒めてくれるのは嬉しいんだけど、彼女の了解がないと出来ないんだ」

松本蓮は鎌倉美月を見た。稲垣京香と桜井メイは鎌倉美月を見て頭を下げた。

「彼女さん、お願いします!」

「ちょっと、ちょっと。……もー! 分かりました。海斗が一緒なら良いよ」

「え、ちょっと待ってよ、俺は写真の先生は出来ないよ。カメラだって持っていないし、写真もカメラも蓮と方が詳しいだろ」

「海斗、ちょっと待ってよ。そんな一人じゃ恥ずかしいだろ。あ、待って待って。二人はどちらの写真が気に入ったの?」


 稲垣京香は指を指した。

「私は手持ち花火の写真が好きです」

 桜井メイも指を指した。

「私は海風を浴びる写真が好きです」


 森幸乃は間に入りアドバイスをした。

「海斗君も一緒に行ったら? 二人の方が美月さんも安心だよ」

 鎌倉美月は二人の方が間違いがないと思った

「そうだね、その方が良いかもね」

 稲垣京香と桜井メイは喜んだ。二人は頭を下げた

「では、先生、宜しくお願いします」

 海斗達は先生の単語の響きに、ちょっと良い気分になった。

「では連絡先の交換をしませんか」

 海斗と松本蓮は、鎌倉美月を見た

「もー! 一々見なくて良いわよ! まるで私が鬼、見たいじゃないの」

 マスターと森幸乃は笑った。松本蓮は続けた。

「稲垣さん、桜井さん、良かったら、ココに居る二人も一緒に良いかな。

俺たち四人は写真部なんだよ。この二人にも未だ教える事が多いから、一緒に教えて上げたいんだ」

「ええ、喜んで。松本君、皆さんと学ばせて頂きます」

六人は連絡先の交換をして、SNSのグループを作った。稲垣京香と桜井メイは、楽しそうな顔をして店を去った。森幸乃は二人をドアまで見送った。


「ちょっと蓮君、なかなか良い所が有るじゃん!」

 鎌倉美月は慌てて松本蓮の腕を引っ張った。

「ちょっと、手を見せなさい!」

「あー! 少し伸びてる! もう、気を付けなさいね!」

「なあ美月、この前と変わんないよ」

「ふふ、嘘よ!」

 鎌倉美月は松本蓮を茶化した。海斗は写真の力に驚いた。

「凄いね、写真の力って! 魅力の有る写真は人を引き寄せるんだね」

 森幸乃は笑った

「この前は協立の女の子が蓮君に、その次は三ツ葉の女の子が美月さんに、今度はフェリサの女の子が、写真を教えて欲しいなんて、君達は面白いね。

あっ、そもそも、私も引き寄せられちゃった」

 皆は笑った。海斗は照れながら言った。

「いや~、今、来た女の子に関しては森さんも、原因作りに噛んでいるからね」

「そっか、美月さん、何かご免なさい」

「いいの、二人の写真が評判になるんだから」


 鎌倉美月は海斗が体調が気になった。

「でも、海斗は気を付けなさい! もっとも蓮が気を回して、私達も入れたから見守ってあげられるけどね」

「うん、気を付けるよ」森幸乃は首を傾げた。

「何、なに? さっきは蓮君の手相を見たり、海斗君に気を付けなさいとか、悪い手相でも出ているの?」

「ううん、いや何でもないの、海斗の周りには女の子が多いから、変な事に巻き込まれない様に、幼馴染みが注意しているのよ」

「そうね、確かに今日の二人だって、お嬢様学校とは言え未だ性格は解らないもんね。海斗君も気を付けてね」

「はは、やだな~、幸乃さんまで。ちゃんと気を付けます」

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