第17話『寝取られ男は金髪男に絡まれる』
黄昏に染まる廊下。
等間隔に奥へ奥へと並ぶガラス窓から差し込むオレンジ色の光がどこか幻想的でノスタルジックな風景を醸し出している。
まぁ俺にとっては三ヶ月通じての帰り道である。
城の端っこの角部屋を貸し与えられてるので、割と自室まで距離があるのだ。なのでそこの部屋に直通しているこの廊下を必ず通る必要がある。別の道筋もあるにはあるんだが、廊下直行したほうが遥かに早いので俺はそうしている。
良く散歩や帰り道はトレーニングの絶好の機会とか言う人もいる。
だがそんなので身に付く筋肉や力も大したものではないので、それなら毎日決まった時間で決まったトレーニングをやるほうが基礎練習の役に立つと俺は思っている。
つまり早い話、楽できるとこは楽したいのだ。
俺がこうやって頑張ってるのも安泰した生活のための必要投資であり、投資しなくてもいい場所に投資はしないのだ。
そんな特に生産性のなさそうなことを考えながら廊下を歩いていると、肩にドンッという風な衝撃が走った。
「申し訳ありません」
「オイ」
――――聞き覚えのある声が鼓膜を揺らす。
ふと振り向けば、なんとこちらの右頬めがけてストレートがせまってくるではないか!
慌てて反射的に拳を避ける。
よく目を凝らして殴ってきた人間を見てみると、いつの日か遭遇したヴィクトリアの兄である金髪兄であることが判明した。
「あなたは……」
「お前、なんでヴィクトリアに勉強なんざ教えてる?」
「仮にも家庭教師ですから」
すると今度は2発目としてキックが頬をかする。
貴族相手に反撃はできない。だからひたすら避けてやろうじゃないか。
「避けるな!」
「私も痛いのは嫌ですので、何卒ご容赦を」
左方向からのフック、一歩下がり顎を引いて避ける。
顔を狙っての目潰し、からのジャブ。姿勢を低くして目潰しを回避。追撃に振り下ろされた拳を素早く体幹を移動させて避ける。
「クソ、クソ!なぜ女なんかに教育してるんだ!しかも庶子だぞ!?ふざけてるのか!」
「教育に貴賤性別は関係ありません。それに私は辺境伯閣下に命じられてしているまで。異論があるならば閣下へどうぞ」
「生意気なんだよ、お前はァ!」
回し蹴り。
しゃがみ避けて、背後へと回り込む。正直この金髪兄は全く戦闘経験が無い……おそらく格闘術は覚えてるがあくまで形式所か。
「おやめを。これ以上されるようでしたら今から魔道具で辺境伯閣下へとご報告させていただきます」
通信用魔道具がないからただの飾りだけどな。それでも面倒を回避するためには嘘だろうがジョークだろうが口八丁だろうが使いこなしてみせる。
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