phrase.2
6.世の中ちょっとくらい尖ってた方がいいのよ。
「ねえ、
「………………」
「聞いてもらってもいいかしら?」
さて。
どうしたものか。
彼女が自ら、しかもまあまあ真剣な表情をして持ってくる「疑問」など、ろくなものではないと相場は決まっている。
おおかた「なぜ男子はすぐに巨乳キャラに飛びつくのかしら?短絡的なのね」とか「バブみを感じるとか言ってるけど、そのまま赤ん坊に戻って社会に出てこなければよいと思うのだけど、どうかしら?」とかその手の内容に決まっている。
「あなた。私に炎上がどうとか言っていたけど、人のことは言えないわよ?」
「
「お蔵入りって……あなたにそんな権限は無いでしょう……まあいいわ。ねえ、四月一日くん。なんで世の自称「女性の味方」は、二次元のキャラクターにいちゃもんをつけることで、自分たちの権利が守れたって思ってるのかしら?現実と虚構の、」
「ストップ」
「区別が、なに?今喋ってるところなのに。小学校で習わなかったのかしら。人がしゃべっている時に割りこんじゃいけませんって。やり直したら?胎児から」
小学校で習うのであれば、胎児からやり直す必要はないよね?
それはともかく。
「なんで渡会さんはそう、四方八方から攻撃を食らいそうなことしか言わないんですか……もうちょっとこう普通のことを言ってくださいよ、普通の」
「普通ねえ……」
渡会は考え込み。
「でもそれって意味があるのかしら?」
「はい?」
「考えてもみなさいな。私とあなたが「今日はいい天気ですね」「そうですね」「今日のお昼ご飯は何にしましょうか」「学食のA定職がオススメよ」なんて会話を繰り広げてごらんなさい。きっとブラウザバック確定よ」
「ブラウザバック好きですね……いや、そこまで内容を無味乾燥にしろとは言ってませんけど」
渡会は不満げに、
「じゃあどうすればいいのよ。誰かを不快にさせるワードは駄目。でも無味乾燥も駄目。それじゃ何も出来ないわよ。あなた、ラブコメをなめてないかしら?」
「なめてはないですけど……え、ラブコメ?」
「つまりね、四月一日くん。多少はとがったことをしゃべっていかないと、面白くはならないのよ。大丈夫よ。こういうのに噛みつく人間は、わめくだけで実害はないのだから、放っておきなさい。そう、炎上商法よ、炎上商法」
「いや、それよりも……え、ラブコメ?」
「ええ、ラブコメよ?あら、四月一日くんは私とラブしたりコメしたりするのは嫌?」
「それは……」
少なくとも、嫌とは言い切れない。
彼女は口を開かなければ……いや、暴言さえ吐かなければ完璧な美少女であるのは間違いがない。それを考えれば、彼女と恋愛沙汰になるのは決して、やぶさかではない。
ただ、
「あら、やっぱり、ラブコメしたいのね。いやね。これだから発情期の男子高校生は困るのよ。ちょっと優しくされたらすぐに恋愛感情があると勘違いして、恋愛に発展しようものならすぐにセックスと結びつける。これじゃ犬や猫と変わらないわ。ほら、お手」
こんなことを言いながら手のひらをこちらに向けてくる人間に、恋愛感情の「れ」の字も抱きようがないのもまた確かである。良い人だとは思うんだけど。
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