14.結局世の中金なのよ。
数日後。
「…………ありえない…………」
通常、スマートフォンゲームというのはリソースが限られる。
ゲームをプレイするのに必要なポイントが存在し、それを使って様々なモードをプレイしていくというのが常で、それらは時間の経過によって増えていく。
従って、その回復量以上にプレイしようと思った場合はどうしても何らかの手段でポイントを“回復”させなければならない。
その方法はゲームによってさまざまで、ゲーム内アイテムを使ったりリアルマネーを投じたりと色々な選択肢がある場合が多い。
そのため、確かに“理論上”は、無限にゲームをプレイすることは出来るだろうし、手持ちの戦力を強化することも基本的には可能なはずなのだ。
ただ、だからといって、
「一体いくらつぎこんだんだよ……」
「さあ?」
これはないだろう。
四月一日は思わずルール違反に認定したくなった。
結論を言おう。
ランキングマッチによる対決は
元々ランキングを重視しないプレイスタイルの四月一日が相手だったというのも幸いしているとは思うが、それにしたってとても初めて一か月あまりの人間が持っていていい戦力ではないし、出していい戦力ではない。
プレイするにあたってポイントの回復はガンガン行っただろうし、あの感じだとガチャの課金額は五桁では済まないはずだ。一体どこからそんな資金が出てきたんだ。
そして、その物量をなぜ四月一日との勝負に使ったんだ。謎過ぎる。
渡会は実に楽しそうに、
「私の勝ち。なんで負けたか、明日までに考えておいてもらえるかしら?ねえ、今どんな気持ちかしら?悔しい?それとも手に入るはずだったものが手に入らなくって残念?もしかして捕らぬ狸の皮算用で、もう私で童貞を捨てる算段をしちゃってたかしら?それならごめんなさいね、思春期の発情猿くん。でも、勝負は勝負だから。ぷーくすくすくす」
ぶん殴るぞ。
もしかして、
そんな彼女は、一通り四月一日を煽り倒して満足したのか、
「さて、それじゃ、私の勝ちってことで、発情猿くんには何か奢って貰わないといけないわね」
そういえばそうだった。
正直なところ忘れていた。
なにも四月一日とて、渡会が素直に自らの体を差し出すとは思っていたわけではない。
あれはあくまで四月一日を挑発するための作戦であり、実際には何らかのからくりを用意しているのは分かっていた。
ただ、それとは別に、単純な勝負で負けるという可能性もまた、眼中にはなかったのだ。
四月一日が勝ったうえで、渡会がなんやかんやして、報酬をうやむやにする。それが、四月一日の思い描いていた結末だったのだ。
「うーん……なににしようかしら……」
「……あんまり高いものは無理だぞ」
「分かってるわよ。貧乏人にたかるほど卑しくはないわ」
じゃあなんで奢らせようとするんだ。という言葉は言わずにおいた。
やがて、
「ま、考えておくわ」
思いつかなかったのか、“保留”という選択をした。まあそれでいいのならいいだろう。結局渡会がなにをしたかったのかは分からないが。本当にただ、四月一日をいじりたかっただけなのだろうか。
「しかしまあ、随分と頑張ったのねえ。これ、フレンドだと過去の順位とかも見られるんだけど、前回より相当いいじゃない。やっぱり体目的なのね。これだから思春期の男子高校生は嫌だわ」
……うん。やっぱりいじって遊びたかっただけだわ。それだけのために凄いリソースの割き方だな。まったく。
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