第28話 初めての報酬 2

「二つまとめて呼ばれるのは珍しいな。まぁ、連れ立っているから一緒だと判断されたか。

 獲物も変わりないしな。ああ、言った時間よりも早いのは、まぁ、持ち込んだものがこの周りにありふれたものだからだろうな。」

「同時に呼ばれるのは、珍しいのですか?」

「ああ、一応金銭のやり取りなんかも発生するからな、基本番号は一度に呼ばれない。

 大きい都市などで、受取のカウンターが複数あれば別だがな。」


そうして話しながら、そのカウンターに向かい、トラノスケが受け取っていた番号札と登録証を受付の女性に渡す。


「ありがとうございます。それではこちらを。」


そして確認した女性は、まずは用紙をトラノスケに渡し、トラノスケはそれを確認した後に何かを書き込み返す。

すると女性が、トレーに乗せられた、硬貨を受け付け台に置く。

それを一枚ずつ確認した後、トラノスケはそれをしまい込み、横にずれる。


トラノスケに倣って、そこに立ち、移動のたびに持ち上げられていたオユキを降ろし、トモエが番号札と、仮登録証を渡す。

仮登録証を見たからだろうか、トラノスケとは違い、受付の女性も、丁寧に説明を行ってくれる。


「はい、ありがとうございます。確認できました。

 それでは、こちらが査定表になります。

 左から、納品物の名称、評価、単価、個数、合計額となります。」


オユキはそれを確認しようと、相変わらずギリギリの受け付け台に、身を乗り出そうと背伸びをし、足首に痛みを覚える。

それを察したのか、トラノスケがオユキを持ち上げ、表の確認をしやすいようにとしてくれる。

オユキはトラノスケにお礼を告げ、そこに書かれているものを見る。

並んでいるのは、持ち込んだものの名称、丸兎の肉、毛皮、エリンギ、といった名称が並び、そこから右に説明された項目が書かれている。


「その、こちらの評価というのは?」


トモエがその項目を指さしながら尋ねる。

物によっては、その評価が異なり、同じ名称のものでも、分けられている。


「はい、こちらは、お持ちいただいたものの評価ですね。」


そういって、受付の女性は別紙束を取り出し、その中から数枚を抜き取り、こちらに見せる。


「全ての確認を行いたいという事でしたら、別のカウンターを後程ご案内します。

 こちらをご確認ください。ギルドの所属員が持ち込んだ物品は、このように、これは今回お持ちいただいている、肉塊に関するものですね、一点ずつ評価がなされます。

 このような食品であれば、こちら、鮮度、重量、食肉としての質。

 それらがこのように1~10の間で評価され、その平均点が最終評価になっています。」


受付の女性が、そう話しながら、説明している箇所を指で示す。

そこには、今回持ち込んだ丸兎の肉、その中で評価の違うものが示されていた。

今回は極近距離という事もあるのだろう、鮮度に関しては全て点数は10となっている。


「成程、ご丁寧にありがとうございます。」

「いえ、これも仕事ですので。こちらの評価表などはお渡しできませんが、確認が必要でしたら、此処の隣、あちらですね、あちらでお問い合わせください。

 その際、カウンターで登録証をお見せ頂ければ、これらの情報は全て所属員ごとにまとめられていますので、そのファイルを閲覧できます。

 写しが必要な場合は、皆さまのほうで行っていただくこととなりますが。」

「分かりました。」

「はい。それではこちらの内容にご不満が無ければ、此処ですね、こちらに署名をお願いします。」


トモエがそこに、名前を書きこむ。

オユキも、頭の中で表の中に記載された計算が間違っていないか確かめたが、特に問題はなさそうだ。


「はい、ありがとうございます。

 それでは、こちらが今回の報酬となっています。」


そういって受付の女性が、硬貨の乗ったトレーを受け付け台に置き、先ほどの表の末尾に記載された金額を示す。

先ほどのトラノスケの様子を思い返せば、そこに間違いがないように確かめろ、そういう事なのだろう。

硬貨には全て数字が書かれているため、それを数え、合計し、間違いがないことをトモエが確認する。

そうして頷き、問題ないといい、その効果を腰に下げられた、小さなポーチにしまい込む。


「それでは、これで一連の手続きは終了です。

 今後も、基本的に流れは変わりませんが、珍しい物品であったり、この近隣で確認されていない魔物の獲物などがある場合は、別途お呼びして状況を伺う事などもあります。」

「成程。分かりました。」

「それでは、今後も気を付けて狩猟を行ってください。」


そう言われて、トモエがトラノスケからオユキを受け取り、その場を離れる。


「トラノスケさん、今日は本当に助かりました。」

「なに、気にするな。俺がいなくても、総合受付でまごついていれば、他の面倒見のいいのがやったさ。」

「それでも、夫の顔見知り、やはり幾分か気安いですから。」

「まぁ、そういってもらえると嬉しいが、さて、どうする。

 今から、ミズキリのところに案内するか?」


言われてオユキは考える、しかし、時間も時間だ。

流石に、少々人を訪うには遅いだろう。

それに、オユキとトモエも、これから腰を落ち着ける場所を探さねばならない。


「いえ、流石に時間も遅いですし。それに今晩、どこで休むかを決めないといけません。」


オユキがそう伝えれば、トラノスケがなるほどと、そう頷く。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る