第15話 ギルドへの加入
軽々と持ち上げられたオユキは、物の見事に固定され、地に足がついていないというのに、書類を非常に書きやすいことに、驚きを覚える。
トラノスケの力の強さに驚いたのもあるし、自分がそれほど軽いのかと、オユキは改めて自覚した。
以前のオユキは、恵まれた体格をしていたこともあり、戦闘時には、それを活かす戦い方をしていたこともあり、今後は気をつけねばと、己を戒める。
今生でも、ゲームの時と同じく戦の神を信仰しようとも思っていたが、それも少し考えてみるのもいいかもしれない。
だが、そこまで信仰とは軽いものだろうか。
そんなことを考えながら、オユキは書類を埋め終わる。
「トラノスケさん。ありがとうございました。」
「なに、気にするな。」
俺を言うとともに、軽くオユキがトラノスケの手をたたけば、そのまま地面にと降ろされる。
足をつけて、改めてトラノスケのほうをオユキは向き、頭を下げながら、改めて礼を告げる。
「ありがとうございます。何分戸惑うことも多く。」
「まぁ、仕方ないさ。元が隣に並んでいるんだ、はたから見たほうが、よくわかる。
ほら、説明があるから、きちんと聞くといい。」
そう言われて、オユキは受けつけのほうに体を向ける。
そこに座る女性は、じつにほほえましげな様子である。
オユキは、かろうじて目線が台を超える、そんな状況に、少し背伸びをするべきかと、考え出す。
「はい。確かにお預かりしました。記載漏れもありませんね。
では、こちら、規約集です。とはいっても狩猟者の方は、細かいことを好みませんし、簡素なものではありますが。」
そういって、受付から、トモエとオユキにそれぞれ一枚の紙が渡される。
かつての世界のように、そこに細かい文字がびっしりと書いて合うわけではなく、丁寧な字で、大きく書かれている。
「それでは、確認を。
一つ。狩猟者は、登録されたギルドの周辺で活動を行うものとする。
一つ。狩猟者は、狩場の変更、拠点の移動の際はギルドへ報告し、許可を得て行う事。
一つ。狩猟者は、獲得した獲物を、ギルドへ販売するものとする。
一つ。狩猟者は、ギルドへの販売に際し25%を手数料として、ギルドへ収めるものとする。
一つ。狩猟者は、その地で見覚えのない魔物を発見した場合、これをギルドへ報告する事。
一つ。狩猟者は、魔物の氾濫等、町の危機に際し、ギルドからの要請に従う事。」
一つ一つ、受付の女性によって読み上げられるが、それもすぐに終わる。
ゲームの時には、こんなものは無かったなと、オユキは思う。
そもそも、プレイヤーが割と好き放題にできる、それが特徴でもあったし、当時はギルドという名の、買取場でしかなかった。
加えて、往々にプレイヤー同士のやり取りや、他のNPCとの直接取引のほうが、特に珍しい素材に関しては、高値が付いたもので、オユキも、序盤は、プレイヤーも少なく、あちこちに三々五々と別れていたころ以外に、利用した覚えはない。
「拠点の移動の際、報告と許可、というのは、どういう事でしょうか。」
トモエが早速受付の女性に確認を行っている。
「はい。やはり場所によっては、魔物が強く、それに対応できそうにない方であったり、特定地域に狩猟者が集まりすぎることを防ぐための措置ですね。」
「成程。それは、やはり先におられる方に優先権が?」
「はい。ただ、狩猟者の方は、その、ひとところに留まることを望まれる方が、あまり、いませんので。
実際は、魔物に対応できるか、というのが主体ですね。」
オユキとしても、ゲーム時代は自身の状態に合わせて、あちらこちらと、次から次へと移動を行ったものだ。
「それと、ギルドからの要請に従うというのは。」
「はい。魔物の氾濫の際ですね。狩猟者の方が常日頃討伐を行っていただいたとしても、それだけですべての淀みが解消されるわけではありません。その淀みがある程度以上溜まると、強い魔物が現れる、又は弱い魔物が大量に発生します。特に後者の場合は、近隣への被害が大きくなりますので、狩猟者ギルドだけでなく、傭兵ギルドとも連携を取って、対処することになります。その際への協力の要請ですね。」
「実際には、どういった内容なのでしょうか。」
「淀みは周期的に発生しますので、その予定日前後は、町中への待機。またそれまでの実績に応じて、ギルドから直接対応に際しての指示を出させていただきます。もちろん、待期期間含めて、最低限とはなりますが、ギルドからお手当も出ますよ。まぁ、出所は皆さまからの手数料の一部ですが。」
そういって、少しおどけるように女性は肩をすくめる。
「いえ、税とはそのような物でしょう。それと、他に私たちが町へ収めるべき金銭などは?」
「狩猟者の方は、その手数料が全てですね。もちろん街中で商売をされる場合は、商人ギルドへ登録を行っていただき、そちらで別途税制の説明を受けてくださいね。」
源泉から25%だけで済むと考えれば、元の世界での税制よりも、かなり軽いなと、オユキとトモエは考える。
ここまで歩く途中で、道が舗装されているわけでもなし、共用のインフラというものが、それほど発達していないため、それにかける費用分だろうか。
そんなことを、ついつい考ええてしまう。
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