第2話
彼女が僕から視線を逸らして、カフェの時計に目を向けている。僕は気付かない振りをしてコーヒーに口を付けている。
今日はお互い友達と約束をしているのだ。
さっきから待ち合わせの時間が気になるようだ。
彼女が「あっ!」と声をあげた。待ち合わせの時間が近いらしい。
店員の“いらっしゃいませ‘’の声が聞こえる度にソワソワして入口を気にし始めている。何だか小動物みたいで可愛い。
何度目かの店員の声で入口に向かって会釈してる彼女の視線の先に僕の友人が手を上げてこっちに向かって来るのが見えた。
彼女は手早くコートとバックを取ると、僕に向かって
「楽しんできてね」と言って入口に視線を向けた。
僕は彼女の忘れ物に気づいて腕を掴んだ。
驚いてる彼女に「忘れ物」と僕の傍らのマフラーに視線を向けた。マフラーに手を伸ばした彼女を不意に引き寄せてやった。
「え!なに?」
「忘れ物」
「ありがとう」と言う彼女にイジワルをした。
「違う」
頭の中が“?‘’だらけの彼女が「じゃあ、行ってきます?」これは正解?というような顔で返事をしてきた。
僕はダメ出しでもう一度「忘れ物」と言った。
彼女は何かに気が付いたみたいで、顔を近づけてきた。僕の欲しい言葉をくれるものだと待ち構える。
その瞬間、耳元にキスをしてきた。不意打ちで力が抜けてしまった。イタズラっ子のような顔で「行ってきます」と言うと待ち合わせに向かって行った。
視線 翠雨 @hirayomo
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