Ⅵ 暴走する「力」(3)
その夜……。
お城の南東、都会を象徴する商業施設として辰本っ子が自慢する〝VIRGO〟界隈の繁華街で遊んだ有荷とその仲間達は、家路につくため辰本駅方面へ向かって歩いていた。
「――金使いすぎて、もう財布空っすよ。邪魔が入んなきゃ、あの転校生の金捲き上げられたんすけどねえ」
たくさん耳ピアスを着けたチャラい二年が太鼓持ちの如き口調で有荷に言う。
「そういや、カツアゲすんのすっかり忘れてたぜ……ま、金が目的でもなかったからな。あれだけ痛めつけときゃ、もうナメた真似はしねえだろう」
その言葉に有荷は色付きメガネのブリッジを指で押し上げながら、思い出したようにそう答える。
「そういや、なんであいつにヤキ入れたんすか? なんか、ムカつくことでもされたんす?」
そんな有荷に、今度は短い金髪男子が何気なく尋ねる。
「……? ……俺がそうしたかったからってんじゃいけねのか?」
すると、有荷は自分でも不思議そうにしばし考えた後、そのことを隠すかのように金髪を睨みつけて凄む。
「い、いえ、ぜ、ぜんぜんかまわないっす! 有荷さんがそうしたかったんなら問題ないっすよ!」
「だろう? そう思うんだったら、くだらねえ質問すんじゃねえよ……さてと。今日はなんか眠いし帰るとするか……じゃあな」
そして、その眼力にビビる金髪へさらに睨みをきかせると、そう告げてさっさと駅前の大通りを自分の家のある方角へ歩いて行ってしまう。
「お疲れさまっした!」
そんなボスに仲間達も挨拶を返し、三々五々、彼らも各々帰途へとついた。
だが、皆と別れた有荷が人気のない線路の高架下へさしかかった時のこと……。
「……んん?」
数名の黒い人影が、彼の行く手を遮った。
「開慧高の有荷だな?」
その内の一つが有荷に尋ねる。一歩前に出て、薄暗い高架下の電灯に照らされると、どうやら白系の服で統一された他校のギャンググループのようだ。
「だったらなんだってんだ? なんか用かコラ?」
「最近調子に乗ってるみてえじゃねえか。ちょっとツラかせよ。その調子の乗りっぷりを俺達に見せてくれよ」
色メガネの中の目を細め、ガンをつけて問い質す有荷に、その白いパーカーにニット帽を被った鼻ピアスの少年は、顎を上げて彼を見下すように眺めながら言う。
「へへへ…」
「そこの河原でレッツ・パリィーといこうぜ?」
さらにその後に控える白色のギャング達も電灯の下へ姿を現すと、各々手に持った鉄パイプやら金属バットやらの得物を見せつけながら、薄汚い凶悪な笑みをその顔に浮かべた――。
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