煉獄──③
全ての剣を砕き、触手を斬り刻んだアシュアさんは、余裕そうな笑みを浮かべる。
「いくら手数が多くて俺と同じ《剣聖の加護》を使ってようと、君は俺には勝てないよ」
すごい……地力が違いすぎる。
同じ能力でも、使い手によってここまで差が生まれるなんて。
「自分より下等な生物と侮っていたものにいいようにやられる気分はどうだい? そろそろ身の程を知ったな、害虫?」
「キッ……キィッ……キッッッッサマアアアアア!!!!」
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォッッッ!!!!
怒髪天を衝く。
七色の光が増大し、漆黒の触手の先端が刃のように変わった。
更に両腕もレーザー砲へ変化し、その全てでアシュアさんを狙う。
「死ねッ!」
「それはできない相談だ」
アシュアさんの体から溢れ出ている七色のオーラが、翼の形となる。
七色の翼に、七色の剣。
その姿は、まるで天に仕える使徒のようだ。
「クロイツ流剣術──流幻歩法」
グラドから放たれるレーザーを掻い潜り、襲いかかって来る触手を斬り捨てる。
速い。とんでもなく速い。
避ける時は目にも止まらない速さで。
それ以外は緩やかに。
その緩急によって、残像を無数に作り出していた。
残像に翻弄されるグラド。
遂には目ですら追えなくなり、触手もどこを攻撃したらいいのかわからず蠢くだけ。
「来ないのかい? なら──俺から行かせてもらうよ」
「ッ!?」
突如、グラドの背後に現れたアシュアさん。
グラドは間一髪身を捩るが、片方の目を斬られた。
「このッ……!」
「そっちじゃないよ」
「うぐッ……!?」
既にアシュアさんはグラドから距離を取り、飛ぶ斬撃を放つ。
だが当たる寸前に鋼鉄の盾を張り巡らし、それを防いだ。
「あれ、おかしいな。俺は盾を出す力なんて使えないけど」
「こ、のッ……!」
お、おぉ……アシュアさん、めっちゃ煽ってる。
グラドもキレ気味で額に血管が走り、目も血走っている。
「殺す……殺す、殺すッ、殺す……! 殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すゥゥゥッッッッ!!!!」
うぐっ、すごい魔力と覇気……! 油断してたら気を失いそうだ……!
『ご主人様、防御フィールドを展開します』
「あ、ありがとう、スフィア」
ほっ。スフィアのおかげで助かった……。
グラドの奴、いよいよ本気って感じだな。これは俺も加勢に……!
「コハク君」
「っ。……アシュアさん?」
見ると、アシュアさんがこっちに手を向けていた。
『手出し無用』──そう言っているように見える。
アシュアさんがそう言うなら、俺は何もしない。
それにアシュアさんが負けるとは到底思えないし。
「殺す──!!!!」
「君たち魔族は、それしか言えないのかい?」
無数のドラゴンをがグラドの周囲から現れた。
擬似生命創造か。でもら今更、そんなのでアシュアさんは止められないけど……。
「フッ──!!」
案の定、アシュアさんの斬撃がドラゴンの群れを斬り刻む。
が……。
「いない……?」
さっきまでそこにいたグラドが消えた……?
辺りを見渡すが見当たらない。
どこだ? どこに……。
『……いるわね。目に見えないだけで』
「本当に、クレア?」
『ええ。間違いないわ』
他のみんなも気配を感じてるのか、目だけである一点を見ていた。
『ご主人様。恐らくこれは、超光学迷彩に類似した能力かと』
「超光学迷彩って、スフィアも使えるあれ?」
『はい。原理は違いますが、効果は同じと思われます』
って、そんな呑気に構えてる場合じゃないよ!?
敵の姿が見えないんじゃ、どうしようもないじゃないか……!
けど、慌てているのは俺だけ。
アシュアさんも落ち着いて剣を構え。
「──そこ」
振るった。
七色の飛ぶ斬撃が宙を走る。
直後──。
「ガッ……!?」
あ、いた。
今まで見えなかったグラドが、青い血を撒き散らして現れた。
「な、ぜ……!?」
「なぜ? 変なことを言うな。君のような邪悪な気配、感じるなという方が無理さ」
……すげぇ。俺、全くわからなかった。
やっぱとんでもないな、アシュアさん。
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