コハクVS偽スフィア──①
◆コハクVS偽スフィア◆
ふーむ。さてどうするか……。
目の前に浮遊する偽スフィア。
冷たい目で俺を睨み、一向に動こうとしない。
あー、やりづらい。
ただでさえスフィアの姿をしてるからやりづらいのに、力までスフィアと同等とかシャレにならない。
『大丈夫よ、コハク。あれはスフィアなんかじゃないわ』
「いやまぁ、それはわかってるんだけどさ」
頭ではわかってるんだ。
でもどうしても見た目で判断してしまう。どうしよう。
戦い方を頭の中で組み立てる。
と、偽スフィアの目が僅かに見開かれた。
ッ、まずい──!
『コハク!』
「うん!」
その場から緊急回避。
偽スフィアの目から放たれた光線が俺のいた場所を通った。
あれ、避けられなかったらマジで死ぬやつじゃん……!
『アンタァ! 何マジでコハク殺そうとしてんのよ! それでもコハクの従者!?』
「いやクレア。あれ偽物」
『そうだった! あーもう、紛らわしい!』
俺の中にいる内なるクレアが発火。
それと同時に、俺の体も発火した。
『丁度いいわ。1度でいいからあいつをこてんぱんにしてみたかったのよ……いつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつも羽虫呼ばわりしてッ! ムカついてたのよォ!!!!』
「ちょっ──!?」
俺の目の前に巨大な魔法陣が展開され、真紅に光る。
クレアと魔人化している今ならわかる。
この魔法陣、ヤバいやつだ。
「く、クレア、落ち着──」
『コハク!!!!』
「はいぃっ!」
こっわ、クレアこっわ。
今のクレアには何言っても無駄なのが伝わってくる。
はぁ……仕方ない、やるか。
魔法陣に手を添え、偽スフィアに照準を定める。
偽スフィアはこいつのヤバさに気付いたのか、高速で移動して的を絞らせない。
『無駄よ、この魔法からは逃げられない。コハク、行くわよ!』
「わかった」
魔力を十分に高め、動き回って距離を取ろうとする偽スフィアに向かい。
「『《絶死龍炎》!』」
魔法を放った。
黒死炎が龍の形を作り、逃げ回る偽スフィアを追尾しながら飛ぶ。
『逃げても無駄よ! この魔法は何かに当たらない限り、ずっとアンタを追尾し続けるわ!』
『────』
偽スフィアが両手を《絶死龍炎》へ向かって伸ばす。
直後、偽スフィアの周囲を防御シールドが覆い、《絶死龍炎》を弾いた。
『ガードすんじゃないわよ!』
「クレア、それは理不尽すぎる」
どんな奴でも、攻撃されたら守るのが普通だ。
いくら擬似生命体だとしても、攻撃されたら守るだろう。
クレアはぐぬぬっと悔しそうに唸る。
でもどうしよう。あの防御シールド、多分本物のスフィアと遜色ない硬さだ。
あれを突き破るとなると……。
「クレア」
『ええ、行くわよッ』
俺とクレアの思考が一致する。
俺らが何かをしようと察知したのか、偽スフィアは無数のミサイルを掃射。
それに対し、無数の炎弾を放って迎撃した。
その隙をつき、人差し指へ炎を集中させる。
赤から朱へ。朱から青へ。青から白へ。
高熱になればなるほど色が変わり、熱が大気中の水分すら蒸発させていく。
クレアの持つ魔法の中でも、最速にして最も貫通力のある魔法が放たれる。
「『《プラズマ・レイ》!』」
眩い雷光が周囲を照らし、光速の熱線が偽スフィアを襲う。
防御シールドを貫通したが、僅かに軌道が逸れて偽スフィアより数十センチ離れた場所を通過した。
『チィッ、外した……ッ!?』
『────』
偽スフィア腕が組み変わり、ブレード状へと変化した。
あれは、高周波ブレード……!?
偽スフィアは両腕の高周波ブレードを構え、高速で接近してきた。
なるほど、遠距離だと勝ち目がないと踏んで接近戦に持ち込む算段かっ。
『舐められたものね。コハク!』
「ああ!」
フラガラッハを抜く。
すると、クレアがフラガラッハに魔力を流し──発火。
燃え上がる炎の剣となった。
スフィアの剣の腕は知っている。
俺の剣技も、ライガや剣精霊に鍛えられ、スフィアと同等以上に渡り合えるようになっている。
偽スフィアがスフィアと同じなら……行ける!
気合いを入れ、迫ってくる偽スフィアを迎撃すべく飛んだ。
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