スフィアVS偽コハク──②
高周波ブレードを構え、スフィアは偽コハクへと接近する。
偽コハクは手をスフィアに向けると、高速で炎の槍を飛ばしてきた。
凄まじい勢いで飛翔する炎の槍。
だがスフィアは、その尽くを高周波ブレードで斬り刻んでいく。
『速さも、熱も、威力も……何もかもが弱い。弱すぎます』
『────』
スフィアの言葉に、更に偽コハクは炎の槍に加えて炎の斬撃を飛ばす。
だがスフィアは止まらない。
今のスフィアは仲間を侮辱されたことで、怒りに満ちていた。
『高周波ブレード──覇乱蛮盛』
雨の如く降り注ぐ炎系魔法を避け、斬り、偽コハクへと肉薄した。
(行ける!)
偽コハクは微動だにしない。
このまま首を斬り、終わらせる。
が、今まで無表情だった偽コハクがおもむろに口を開き。
『スフィア』
スフィアへと、笑いかけた。
『ッ……!?』
体が硬直する。
微笑みも、声も、何もかも……敬愛する主人のものと同じ。
そのせいで高周波ブレードを振り切れず、寸前で止めてしまった。
一瞬の硬直を見逃さなかった偽コハクは、炎の剣を作り出してスフィアへと斬りかかる。
『くっ! 防御シールド……!』
間一髪、炎の剣を防ぎ距離を取る。
その間に偽コハクは無表情へと戻っていた。
スフィアの隙を作るために、グラドが遠隔で偽コハクを操作したのだ。
遠くにいたグラドは、冷たい目でスフィアを見つめていた。
『へえ。やっぱり自身の慕う主への攻撃はできないみたいだね。なら、お前への愛を囁いてやろうか?』
くいっと指を動かすグラド。
と、偽コハクは再度柔らかな笑みを浮かべた。
『スフィア、君が好きだ。君を愛している。こっちへおいで、スフィア』
『…………』
偽コハクの言葉がスフィアに語り掛けられる。
抑揚も表情もコハクと同じ。何一つ変わらない。
スフィアはゴーレム系の魔物だが、全てを人間と同じように作られた
偽物だとわかっていても、一瞬だけ愛の言葉に硬直してしまう。
が、それ以上に……偽物がコハクの真似をしていることに、憎悪を覚えた。
『クソが……我らが至高の主の姿形だけでなく、声色や表情まで真似をする……万死……万死万死万死万死万死万死万死万死万死万死万死万死万死万死万死万死万死万死万死万死万死万死万死万死万死万死万死万死万死万死万死万死万死万死万死万死万死万死万死万死万死万死万死万死万死……万死ッッッ!!!!』
直後、スフィアの形状が変化した。
背中からメカメカしい触手が伸びる。
それぞれガトリング砲2門、巨大チェーンソー2つ、高周波ブレード2つが先端についており、更にスフィアの両腕はレーザー砲へと形を変えた。
近接戦闘も遠隔戦闘もこなせ、更にスフィアの演算能力が全て戦闘に割かれる。
目の前の敵を殺戮するまで止まらない戦闘マシン。
紫の瞳は赤く変化し、魔法陣の形を模した照準線が現れる。
『目標捕捉』
両目の照準線が偽コハクを捉え。
『
ガトリング砲とレーザー砲を同時に放った。
偽コハクは防御魔法を展開。
一瞬で防御魔法を砕くも、瞬時にその場から離脱。
目の前まで迫った超高速の攻撃を難なくかわしていく。
『殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す……!!』
ふくらはぎ部分からブースターが現れ、青白い炎を噴射。
偽コハクが反応できないスピードで迫り、高周波ブレードとチェーンソーが偽コハクへと振り下ろされた。
防御魔法を展開し、僅かに生まれた隙を縫ってかわされる。
『────』
炎の球をいくつも作り出すも、その尽くをスフィアが破壊し、超至近距離でガトリングを撃ちまくる。
胴体に穴が空き、偽コハクの動きが僅かに硬直する。
その隙に高周波ブレードで四肢を切断し。
『コロラド・レーザー!!』
最後に心臓部と頭部へ向けて、レーザー砲を問答無用で放った。
心臓部と頭部が吹き飛び、最後にはモヤとなって消える偽コハク。
『ご主人様と仲間を侮辱した罪、貴様の分はこれで帳消しにしましょう』
武器を展開していたスフィアはいつものメイド姿に戻り、本物の主人の下へと飛んでいった。
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