国王への朗報
◆
「はああぁぁぁっ……はあああああぁぁぁぁぁぁ……! も、もうダメだ……この国は、おしまいだ……!」
ターコライズ王国、国王の執務室にて。
大量の資料を前にして、疲弊仕切った国王は頭を抱えて床をのたうち回っていた。
水脈も確保した。
家畜の飼育方法も確立した。
痩せた大地に肥料を与えてできる限り回復させた。
良くしてもらっている隣国との話し合いにより、人員を割いてもらって何とか土台は作れた。
が、やはりまだ課題は山積みで。
「もう終わりだ……このままでは死ぬ……私も、国も……!」
国王は、回復しつつある国に満足をしていなかった。
人間というのは、1度上がった生活水準というのを下げるのは難しく。
2ヶ月程経った今でもあの頃の国の水準と比較してしまい、国王は苦悩を続けていた。
だが、それは間違いだ。
まだ他国と比べたら国力は低いままだが、この2ヶ月で信じられないほどこの国は回復していた。
それもひとえに、国王の努力とリーダーシップがあってこそ。
しかし高すぎる目標は、時に人を苦しめる。
それが、今まさに国王を苦しめている原因だった。
「なぜこうなった……なぜ……なぜ……」
もう何度自問したかわからない。
……いや、理由はわかっている。
ギルドのハンター達が、ある青年を追い詰めて、この国を追い出した。
その結果、この国を護っていた偉大なる存在がこの国を見限り、青年を追って他国へと行ってしまったのだ。
未だに、怒りがフツフツと湧き上がる。
でも今更当たり散らしても意味がない。今は少しでも、国のためになることをしなければならないのだ。そんな暇はない。
……正直なところ、いっそのこと全てを投げ出して逃げ出したい。
いや寧ろ、この苦しみから解放されるなら、死を。
そこまで今の国王は追い詰められていた。
虚ろな目で、机の上に置かれていたナイフを見つめる。
これで喉を切り裂けば──。
「ッ! い、いかん!」
いつの間に手に握られていたナイフを投げ捨てる。
乾いた金属音が部屋に響き、今やろうとしていたことに罪悪感を覚えた。
「ダメだ……そんなのダメだ! 私はこの国の王! 民を導き、幸せにするまでは死んでも死にきれん……!」
己を鼓舞し、机に向かった。
まだまだやるべき事は残っている。
今この状況で投げ出せば、国民が野垂れ死ぬ可能性が高い。
そんなことあってはならない。
王として、最後まで抗う。
そこで胃痛を感じ、医者に処方させた胃薬を飲んだ。
ここ最近ストレスや栄養の偏り、睡眠不足が重なり、胃薬が無ければ仕事ができないほどの胃痛がやって来ることがあった。
しかし、余程のことがなければ、この薬である程度押さえ込むことができる。
しかし。
「こ、国王様! 国王様ぁ!」
「ど、どうした!?」
余程のことが、来てしまった。
突如、血相を変えて部屋に入って来た国王専属の執事。
その手には、見たくもない報告書のようなものが握られている。
「こ、こ、国王様……!」
「ま、待て! とにかく待ってくれ!」
聞きたくない聞きたくない聞きたくない……!
でも、聞かないと先に進まない……!
国王は更に胃薬を飲み込み、目を閉じて気持ちを落ち着かせた。
「……よろしい。申してみよ」
もうどんな報告を受けようと、今更だ。
今から1つや2つ、悪い報告を受けようと構わない。
この国の王として、全てを受け入れてみせる!
そう意気込み、椅子に座って執事からの報告を受けると。
「せ、先日より探していたテイマーの青年が、ブルムンド王国にてハンターをしているとの報告を受けました!!!!」
緊張が途切れ、今までの心労と疲労がピークに達し、国王は気絶してひっくり返ったのだった。
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