初仕事編

第56話 初仕事に向けて

 ガニメデへの魔力の充填も終わり、オメガユニットが四基揃って使用できるようになった。


 現在はハルクを中心に、四基がドッキングしている状態だ。

 オメガユニットがそれぞれ、三角錐というか、正四面体の頂点に位置して、ハルクを囲んでいる。


 チハルによると、この配置はテトラフォーメーションといって、全方向に隙がない基本陣形だそうだ。

 それでいて、他三基の出力を一基に集中して攻撃することで、一点突破も可能なのだとか。

 オメガユニットで、次元魔導砲オメガを使う場合は、この陣形を組まなければならないらしい。

 まあ、オメガユニット一基でかなり強力なので、陣形を組むのは艦隊が相手の場合になるそうだ。


 さて、そういうわけで、このままでは過剰戦力なので、オメガユニットはドッキングを解除して、それぞれ独自に衛星軌道を回りながら、セレストの防衛に当たってもらうことにする。


 衛星軌道といえば、そこには曳航してきた貨物船が手付かずに放置されている状態だ。

 本来であれば、修理するか、売り飛ばしてしまいたいところであるが、ステファに止められている。

 先に未発見のゲートを見つけなければならない。


 だが、発見するまでに、どれだけ時間がかかるかわからないし、その間、収入がないのも困る。

 まだ、チハルを買った時の借金をまるで返せていないのだ!


 と、いうことで、俺は小惑星帯でのレアメタル採取の仕事をしながら、ゲートを探すことにした。


「取り敢えず、オメガユニットについてはケリがついたので、俺はアステロイドベルトにレアメタル採取に行こうと思う」

「ゲートはどうするのよ?」

 案の定、ステファがゲートの話を持ち出してきた。


「そのついでにゲートも探しておくよ」

「ゲートを優先した方がいいと思うけど?」


「少しは稼いで、借金を返していかなければならないから、ゲートを優先するわけにはいかない」

「ゲートが見つかれば、借金なんてすぐ返せるのに……」


「それじゃあ、いつになるか分からないだろ。少しずつでも返していかないと」


「あの、セイヤ様は借金があるのですか?」

 リリスが心配そうに尋ねてくる。


「ああ、前回、宇宙で使えるお金を持っていなかったからね。諸々、全て借金で賄ったんだ」

「そうですか。それで、借金はいかほどでしょうか?」

「えーと。三千五百万ギャラクティ貨程度かな」


「ギャラクティ貨がどの程度かわからないのですが、三千五百万というのは多いように感じますがどうなのでしょう?」

「俺にもよく貨幣価値がわからないんだ。取り敢えず今回稼いでみないことには何ともいない」


「それは困りましたね」

「ただ、稼いだ分、全て儲けになるから、そんなに心配しなくても大丈夫だ」

「そうなのですか?」


「稼いだ分が全て儲けって、そんなことないでしょ。船を動かす魔力を充填するのにはお金がかかるのよ」

「ステファ、それは、ステーションで充填してもらうと、だろ。自分で充填する分にはただだ」


「あー! それずるい。チートじゃない。ボロ儲けだわ」

「ということで、コストゼロで儲けられるんだ。リリスは安心してくれ」


「それならいいですけど……。無理はしないようにしましょうね」

「リリスには心配をかけさせないようにするよ」


「そうですね。今度は一緒ですから大丈夫です」

「えっ? リリスはセレストで留守番のつもりだったんだが」


「また置いてきぼりなんて嫌です。今度はついていきます」

 リリスに縋るような瞳で訴え掛けられると断るのは難しい。

「そうか、まあ、それでも構わないか……」


 アリアの方を確認するが、反対する様子はない。

 だが、リリス一人にはしないだろうから、アリアも一緒に行くことになるだろう。


「当然、私も行くわよ」

「ステファはセレストでゆっくりしていればいいじゃないか?」


「そういうわけにはいかないわよ。ゲートを探さないと」

 どうも、ステファは一攫千金の夢を見ているようだ。


「私もセイヤ様にお供します」

「いや、聖女のお供はいらないから」


「そんな、セイヤ様は私だけを仲間外れにされるのですか?」

「仲間外れにしているつもりはないが……」


「でしたら、私も連れて行ってください!」

 聖女はリリスと違って縋るように見るだけでなく、実際に縋り付いてくるからな。

「わかった、わかった。聖女も連れて行くよ」

「ありがとうございます」


 ということで、今のメンバーでレアメタルの採取に行くことになった。


 セレストを出発したのはそれから三日後だった。

 その間、ドックで買った植物の種などを地上に下ろしたり、父上たちにこれから仕事に出かけることを説明したりした。


 植物の栽培については父上に丸投げした。

 希望者を募って農家に試作してもらうことになりそうだ。

 試作が上手くいけば、食生活がかなり改善されることになるだろう。


 あと、大量に買ってあったポテトチップも全て地上に下ろした。

 食べたくなったらフードディスペンサーで作れることがわかったからだ。

 こんなことなら大量購入しなければよかった。

 セレストのみんなで美味しくいただくことだろう。


 ちなみに、マカロンはフードディスペンサーでは再現できなかった。

 次回のアップデートに期待するとしよう。


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