T川の河川敷。


「カンパーイ。」


栄子の号令の元、乾杯する俺たち。ふー。さっきまで火おこしでずっと火の前にいた俺は、みんなが肉を焼き始めたところから少し離れた位置に用意したやや大きい丸い石を椅子代わりに座り、炭酸飲料を一気に飲み干して、首にかけたタオルで溢れる汗を拭う。あちぃ。


「先輩、どうぞ。」


おっ、サンキュー。B子がこっちに来て、空になった俺のプラスチックコップに炭酸飲料を注いでくれる。小声でB子が話しかけてくる。


「昨日はお疲れさまでした。」


お疲れさん。しかし、変な気分だ。昨日散々な目にあったのに、もう体は元通り。しかも、渦中の純子さんもいる。今はみんな肉に夢中になってて、こっちには目もくれていない。なんだかなー。


「そうですねー。結局、純子さんの記憶の中では何もなかったことになってますしね。」


そうだな。軽く答える。そうなのだ。この約2週間の間の純子さんの記憶はとても不思議なことになってしまっている。俺たちとの記憶だけがすっぽりと抜け落ちてしまっているのだ。うーん。正確ではないな。俺との恋愛にかかる記憶がすっぽりと抜け落ちてしまっているのだ。おかしいのはそれだけじゃなく、俺と純子さんとのメッセージのやり取りすらもスマホから消えてしまったのだ。


「あの…ショックでしたか?」


B子は若干申し訳なさそうに聞いてくる。ショック…ショックだったんだろうか。正直分からなかった。うーん。あれは好きだったんだろうか。何だったっけ?昔、そんな歌なかった?恋に恋してたーみたいな。でも、そんなん言ったら相手に失礼になっちゃうか。うーん。俺はどう説明していいか分からず、ただの感想とも言える答えをB子にした。


「ふふっ。やっぱり、先輩は優しいですね。」


優しい?なんで今の会話でそうなるんだ?不思議そうな顔をしてB子を見たが、B子は笑顔のままだった。


「あんたたちも肉食べなさいよー。こんなお肉なかなか食べられないんだからね。」


おかんかお前は。文句を言いながら俺たちはみんなの輪の中に交ざった。



「じゃあ、俺は調理部のみんなを先に送ってくるから、後片付け頼んだぞ。」


ミニバンタイプの8人乗りの車の運転席から顔を出した親父が叫ぶ。いちいち言わなくても、分かってるよ。助手席に座った土井が申し訳なさそうに頭を下げている。そんな気にしなくてもいいのに。調理部のみんなを見送った俺たちは片づけをしながら、昨日のことを話し始めた。なんでお前らがあの場所に来れたのか。まずはそこからだった。


「先生たちが、意思を持った因子の特定をずっと続けてくれてて、その因子の揺らぎ、私たちが裂け目が出る前に気づけるあれね、その兆候がa山付近で観測された、って連絡を受けた私がそれを聞いてまさかと思ってワープで来てみたら、純子ちゃんとあんたがいたわけ。」


そういうことか。ワープってこの世界でも使えるのか?だとしたら…


「あんた変なこと考えてるでしょ?今回のは特別よ、特別。実際、ワープって言っても一回、二重世界にダイブすることになるんだから、何があるか分からないでしょう?」


なんだ。俺の淡い夢は脆くも崩れ去った。


「それより、私が倒されちゃった後どうなったのよ。気づいたら全部終わっちゃってるし、あんたは寝たまんまだし。ほんと、今度、先生たちに会うときはきちんとお礼言うのよ、あんた。先生たちが私たちを家まで送ってくれたんだからね。」


あーそういうことか。目が覚めたら、家にいたのはそういうわけだったのか。それに今日突然、浜本先生が来れなくなったのはやっぱり昨日の一件絡みだったんだな。今度会ったら、お礼を言おう。とりあえず、俺は昨日のラストの話をした。


「なるほどー。私の砕けた消しゴムで治療したってことですか。へー。そんな使い方なんて思いつきませんでした。凄いですよ。」


深瀬さんは悔しそうに言ってくる。えっ?そうなの?てっきりそんなもんだと勝手に思ってたけど、だって、消しゴムは消すためにあるんだろ?


「そりゃそうですけどー。なんか悔しいなー。自分の武器をほかの人にうまく使われるのって。」


そうやって言われると、照れてしまう。


「でも、先輩すごいですよ。それだけでもすごいのに、そのあと、栄子先輩の能力を応用して、消しゴムを動かすなんて。それで、B子ちゃんも治療しちゃうなんて僕、感動しました。先輩たちのように光の芯を剣に見立ててやってみたけど全然でしたし。」


そんなことあるか。江藤君が自分の武器を俺たちのようにしていたのを見て出来るかもしれないと思っただけだ。きっかけは江藤君に他ならなかった。


「でも、あんたがおとり役になるなんてね。普通ここまで思いついたんだから、最後決めたいとか思わなかったの?」


どんな質問だよ。決めるつもりだったさ。けど、不安が無かったわけじゃない。だから、俺がダメでもB子ならやってくれるかもしれない。そう思ったら気持ち的に楽になって思いっきりいけたんだ。結局、倒されちゃったけどな。


「俺が何とかするって思えないのかしらねー。まったくヘタレね。」


うるせー。そこまで強くねーよ。ただ、そうありたいとは思ったけどな。自分でなんとかする。これからは。


「まー結局、一番の功績者はB子ちゃんってことよね。見事倒したわけだから。」


そうだな。B子が見えた瞬間の安心感は半端なかったからなー。


「そんなことないです。皆さんが色々してくれたから。それに先輩が消しゴムを取ろうとしてた時に合図を送ってくれたから。」


B子はすごく恐縮している。もっと堂々とすればいいのに。しばらくすると、純子さんの中にいたものについての話に変わっていた。あれは確実に意識を持ってたよな?俺は勝手にあの因子ってやつに意識は無くて、ただなんて言うか植物が太陽に向かって伸びるのとか、昆虫が蛍光灯に集まるみたいなそんな習性か何かだと思っていたが、あれは確かに喋っていた。


「そーね。こっちの世界のこともある程度理解してるみたいだったし、そういや、なんであんたとデートしようなんて思ったのかしらね?」


そこなんだよなー。なんか意識がぐらつくとどうとか言ってたんだよな。さっぱりわかんなかったけど。ただ、それも気になるはなるんだけど、あの因子って俺がおっさんと会った時に出て来たんだよな?だとしたら、その近くにいる奴に乗り移るのが普通じゃないか?なんでわざわざ純子さんだったんだ?


「多分、それはほんとに偶然かも。純子ちゃんたちにそれとなく聞いてみたんだけど、その日たまたまうちの近所の今日子ちゃんのとこにお泊りに来てたみたい。」


その時にたまたま?ほんとかよ、それ。ただ、それ以上のことはわかりようがないみたいだった。納得するしかないのか?じゃあ、そのあと俺たちと接点を持ったのも偶然って言いたいのか?


「そこは多分、私たちが調理部にお邪魔したのは偶然だけど、それが無くてもあんたのところに純子さんは現れたと思うわ。今日子ちゃんがあんたについて純子ちゃんが詳しく聞いてきたらしいの。今日子ちゃんだって、あんたのこと知ってるって言っても、土井君の友達ってだけなのに。そう、お泊りの時。でも、純子ちゃん覚えがないらしいのよね。」


まぁスマホのメッセージも消えちゃってたのに、土井は俺に純子さんが弁当作ってきてたのは覚えてて、でも、その理由がなんかズレてたんだよな。ホントに練習ってことになってたし。なんか辻褄が合っているようで合っていないというか不思議な感じなんだよな、全部が。


「でも、結局、普通のって言っていいか微妙ですけど、普段ダイブして侵入を防いでる因子も、今回みたいなイレギュラーな因子も何なんですかね?」


深瀬さんはふと思いついたようにみんなに疑問を投げかける。確かにな。一体何なんだろう。うーん。


「それが何って明確なことは分からないけど、あれは敵であることは間違いないわ。このまま何もしなければ、世界は滅んでしまうもの。」


栄子は厳しい表情で言う。それはまるで、自分がそれを知っているかのような口ぶりだった。俺は、ダイブした二重世界で見た栄子が見ている世界を思い出した。深瀬さんはそんな栄子の言葉を素直に受け取り、


「うーん。結局分からないけど、やるしかないのかー。あっ、そういえば、先輩が会ったっていう【私リー】のメカニックマンも気になりますよね。あれも別の世界から来たってことですよね?」


流れをぶった切って、あのおっさんの話を切り出した。あー。俺は重大なことを思い出した。そこからは気が気でなくなってしまい、なんだったんだろうなーっと上の空の返事をしながら別のことが頭によぎっていた。



自宅に戻った俺は親父の車からバーベキューで使った網なんかを降ろしながら、栄子にそれとなく質問をした。


「えっ?スタイン教授は普段どこにいるかって?何よ、いきなり。」


いや、普通に教授とかって普段学校じゃ見かけないからさ。もしかして、別にプログラミング部の部室以外でどっかに研究してるところとかあるのか気になってさ。と、自然な感じで答える。


「あー、そういう意味ね。普段は、隣町のW大の研究室にいるわよ。そこも侵食研究の場所になってるから。まあ、私たちがおいそれと行けるようなところでは無いわよ。流石に。」


うーん。W大かー。ここら辺ではかなり名の通った私立の大学だ。うーん、かなり勇気がいるな。どうしたもんかな。


「何よ、その顔?もしかして、あんたなんかやらかしたんじゃないでしょうね?」


何を根拠にそんなこと言うんだよ。いや、この前はあんな感じで会ったけど、もう会う機会とか無いのかなって気になっただけで、世間話を装い、俺は自然な感じで答えた。多分、答えられたと思う。


「そうねー。よっぽどの事が無い限り、会う機会は無いわねー。私だってそんな会ってる訳じゃないし。あっそういえば、たまにだけど、【侘】で浜本先生と一緒にいるとこ見かけるわね。あそこのコーヒー評判だし。」


わび?それどこの店の話だよ?


「どこって、あんただってよく行く【一茶丸】の隣にある純喫茶よ。」


えーっと、【一茶丸】の外観を想像する。頭の中に【一茶丸】の隣の店の入り口に置かれた【喫茶侘】の看板が出て来た。あっあそこか。あれはわびと読むのか。てっきりだと思っていた。まぁ、そんなことはどうでもいい。



俺は一人、【侘】の前に立っていた。ほんとになんもしてないでしょうねー?と疑いの目を向けてくる栄子をなんとか振り払い、一人でここまで来たわけだが、ここにスタイン教授がいるのはどれほどの確率なのだろう?正直、これはかなり望みが薄い気がする。しかし、何もしないわけにも行かないので、俺は意を決して、【侘】に入ることにした。



「いらっしゃい。」


喫茶店に入るとお爺さんと呼ぶにはだいぶ失礼な気がする白髪オールバックの老紳士のマスターに出迎えられた俺は店内を見回す。…いた。ほんとにいた。テーブル席に一人で座って、ノートパソコンを見つめるスタイン教授が。俺は、だいぶ挙動不審になりながら、スタイン教授の前の席に座った。


「君か。しかし、よくここがわかったな。浜本あたりにでも聞いたのか?まぁ、いい。私に何か用があるのか?」


不思議そうな表情をしながら、スタイン教授は聞いてくる。俺はびくびくしながら、昨日のことを話そうとした。しかし、こんなところで話していいものか、悩んでいる俺を見て、


「…そうか。場所を移そう。」


スタイン教授は俺が言おうとしていることを察した様子で、テーブルのノートパソコンを片付け始めた。



スタイン教授に連れられ、俺は車を停めている近くの駐車場に向かって歩いていた。途中、スタイン教授が急に後ろを振り返った。俺もつられて振り返る。電柱に隠れているつもりの栄子が見えた。お前、それは流石に無理があるだろう。


「おや?もう一人、招待しなくてはならないみたいだな。どうかね?」


スタイン教授はさも面白そうに俺に同意を求めてきた。まぁ、そうなるよなー。あれじゃあ。



俺たちは隣町のW大の中のスタイン教授の研究室に招かれた。両壁には色んな学術書であろう本が敷き詰められた天井まで届く高さの本棚、中央に長机がおいてあり7、8台の起動中のノートパソコンとおそらく研究の道具であろうよく分からない器具が机いっぱいに乱雑に置いてある。俺たちは、本棚と長机の間に置かれた椅子をすすめられた。狭い。よくこんなんで研究なんて出来るな。俺はそんなことを考えながら座った。車の中で、俺が昨日の一件中に、おっさんと交信したという事実を一緒に聞いていた栄子からのもう、あんたが余計な事するからという無言のジト目が痛い。仕方ないだろ。俺だって、必死だったんだから。そもそも、ここへは俺一人で来るつもりだったんだから、わざわざ、何しに来たんだよ。まったく。もともと研究室にいたトゥイさんに指示を出し終えたスタイン教授は俺たちの向かいの席に腰かけた。


「先ほどの話だが、今、昨日のデータの再確認を行わせているから、君の行動についての話はその結果が出た後だ。そこで、この待ち時間の間に、こちらの情報を伝えようと思う。君が言っていた漫画の原作者の件だが、少し妙なことになっていてだな。いや、正確に言えば、君の言う通りになったと言うべきか。失踪していたよ。8年前に。」


失踪?ってことはあのおっさんが迎えに行けたってことだよな。良かった。


「まぁ、その原作者は元々、天涯孤独の身で、失踪届も専属契約していた出版社が出したくらいだ。失踪宣告の手続きをするかどうか悩んでいるという話まで聞いたよ。漫画家にも話を聞いたが原作者から写真を撮られたことは覚えていたよ。ただ、そのあとのことはさっぱりだったよ。年月によって記憶が風化してしまったのか、純子というんだったかな、その因子にのまれた彼女の記憶があやふやになっていたのと同じ作用なのか。そこは定かではないがな。まぁ、この原作者の戸籍にも不可解な点は見られたがそこは君にとって問題ではないから割愛するが。とにかく、君が体験したことは文字通り現実であったことが証明されたわけだ。」


ふーん。話を聞きながら疑問がわいてきた。8年も前にいなくなっているのになんで今も原作者として名前が出ているんだ?


「不思議だろう?8年前にはすでに原作時点ではその漫画は完結していて、それを基に漫画家は今も書き続けているらしい。原作は原作者が書いているわけだから間違ってはいないんだが、どうにもな。失踪直後の動きもおかしい。向こうでは、少年漫画に失踪はふさわしくないため隠すことにしたと言われたよ。いったい何が真実なんだろうな、この場合。私自身、二重世界が原因で歳を奪われている。時間という概念への信頼が揺らいだのはこれで2度目だよ。…どうやら、結果が出たみたいだな。」


隣の部屋から出て来たトゥイさんが俺たちのもとに近づいてきた。タブレットを抱えている。そして、置いてあるノートパソコンなんかをずらして、長机の中央に場所を作るとそこにタブレットを置き、俺たちに説明を始めた。うん。これがイレギュラー因子が来た時に感知した波形、そんで、こっちが昨日の波形。うんうん。熱心に説明をしてくれているがあんまり意味は分からなかった。とりあえず、イレギュラーの因子は昨日また新たに現れた様子はないと聞いて、よかったー。俺はほっと胸を撫でおろした。さっきまで狭くてしょうがなかった椅子と机の間が少し広くなったような気がした。隣の栄子も安心しているようだった。


「新規のイレギュラー因子の発生はなしということでこちらも一安心と言ったところだが、君はどうやってその異世界の住人と交信出来たんだい?」


俺はやや緊張しながら、自分で模倣したコネクトリングで漫画のキャラクターと脳波なのかなんなのか分からないが会話を交わしたことを伝えた。


「コネクトリング…それを今出せるかい?」


慌ててポケットの中を探る。よかった。もしかしたらと定規をポケットに入れとくのが日課になってて。俺は合言葉を唱えて能力を発動させる。やっぱり昨日の夜に比べると光が弱い。感情にも左右されるんだろうな。俺はコネクトリングを外し、スタイン教授に渡す。


「ふーん。少し計測器にかけるがいいかい?」


いいですけど、昨日より光が弱いので役に立つかどうか…


「それはきっと大丈夫だ。光度の差は恐らく増幅器の役割みたいなものだろう。」


スタイン教授は俺から受け取ったコネクトリングを持って、しばらく待っていてくれと言い残し、トゥイさんと二人で隣の部屋に行ってしまった。ふー。緊張した。


「問題はなさそうでとりあえず安心したわね。」


そうだな。けど、交信出来たらどうするんだろうな。うーん。考えてみたがさっぱりだった。


「そうよねー。けど、もしきちんとお互いが理解しあえれば世界は広がるはずよね。お互いが足りないものを補えればね。」


ん?どういうこと?さっぱり栄子の言ってる意味が分からなかった。あ!異世界旅行とかどうだ?お互いの観光地に行くんだよ。ワクワクしないか?


「それはいいわね。お互いの世界の美味しい料理とか?…ほんとあんたは平和ねー。」


栄子は若干小馬鹿にしたように俺をなじる。なんだよ、そりゃ。そんな話をしているとスタイン教授が戻ってきた。


「待たせたな。もう能力を解除しても構わないぞ。今日のところはこれで終わりということにしよう。」


俺は少しだけ、人体実験か何かされるんじゃないかと冷や冷やしていたので、その言葉を聞いて安心していた。その様子を察したスタイン教授は、


「まさか人体実験でもされると思っていたのか?ふふふ。人体実験はコリゴリさ。安心していい。」


スタイン教授はやや自嘲気味に言った。



思いっきり、はーっとため息をつく。疲れたー。


「何よ、あんたバーベキューの時と大違いじゃない。疲れたの?」


俺たちは今、うちの近所の公園にいる。トゥイさんにここまで送ってもらったがやっと落ち着けたことでどっと疲れがきていた。


「何よあんた、あんな高級な車に乗れる機会なんてなかなかないのよ。せっかくいい経験させてもらったのにしんどそうな顔して。」


だからだよ。河川敷にいた時がえらく遠い記憶に思える。あー俺ってなんて一般ピーポーなんだ。メチャクチャ場違いな気がして疲れたぞ。あんなんに慣れることなんてあるのかなー。正直、あんなんは特別な人が乗るもんだな。


「何言ってんのよ。それは全部あんた次第じゃない。あんたがあんな車に乗れるようになるって思ったら乗れるようになるし、乗れないって思ったら乗れないままよ。結局はあんたの意思次第よ。はー、情けないわね。昨日のあんたはどこ行ったのよ?」


栄子にそう言われてドキッとした。そうだな。意識がすべてを決めるなら、きっと今までの俺はその意識の決定権を俺以外の何かに任せすぎていたのかもしれないな。


「急に黙ってどうしたのよ?」


うんにゃ、何でもない。よーし。まずは本当に彼女を作るぞ。英太には負けられないからな。あいつの悔しがる顔をみてやるぜ。


「ぷっ。あんた彼女が欲しいの?好きな人とかいるわけ?」


好きな人かー。そう改めて言われると好きって何なんだろうな?


「えっそこから?そーね、こいつといるとドキドキもするけど、落ち着くなーとかそんな軽い感じでもいいのよ、最初は。」


ドキドキ、落ち着く?うーん。


「おっ、その顔は誰か浮かんだわね。教えなさいよ。私がうまいこと手伝ってあげるから。くくくっ。」


なんだ、その引っ搔き回したい、どうにかして面白いことに交ざりたいという悪い笑顔は。絶対言わないからな。

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