僕と彼女の、繰り返される夏

作者 木立 花音

28

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★★★ Excellent!!!

仮初のカタチではじまった高校生カップルが、
絡みつき、鎖で縛られるような強烈な困難に直面することで、
自分の本当の感情、愛情、相手への思いやりを理解していく。
若者達の人間的成長に心を奪われる。

目に浮かぶ情景および心情の描写は、技巧的でbrilliant!
本当に素晴らしい作品です。

★★ Very Good!!

 一つ一つを見ていくならば、タイムリープして繰り返させるというSFという面と、夏という青春ものには欠かせない季節を舞台にしたジュヴナイルものという面を併せ持つ物語です。

 この二つのジャンルの繋がりは意外ではなく王道で、眉村卓のなぞの転校生しかり、光瀬龍の夕ばえ作戦しかり、ジュヴナイルの名作の多くはSF的な性格を持っていた事を思い出さされるジャンルでした。

 しかしながら。それら古き良き名作の多くが、夕暮れ時をイメージさせられ、橙色や朱色をイメージカラーとして浮かばせてしまうのに対し、本作は夏の空のように、群青色と白をイメージさせられます。

 タイムリープし、何度も苦い事を繰り返すことになってしまっても成し遂げたい目的と、ともすれば青臭くも感じられてしまう恋愛模様が、そう思わされるのかも知れません。

★★★ Excellent!!!

タイムリープSFと青春・恋愛って相性よすぎですね。しかも季節は夏。

このフォーマリズムは「時かけ」以来長く愛されてきたもののひとつだと思いますが、この作品はそのど真ん中を突いて、ぎゅうぎゅう胸を締め付けてきます。

物語は、主人公の智也が2年前に亡くした彼女「藤堂栞」とそっくりの「柚木栞」に出会うところからスタート。この時点ですでに甘ずっぱい感満載なのですが、舞台は藤堂栞が亡くなる前の世界にタイプスリップ。当然、彼が取った行動は、彼女の死を避けたいわけなのだが、当の栞のほうも記憶と違う行動ばかり。

はっとする夏の描写や、鍵となる小物の使い方。運命に翻弄される2人の切ない心理も直接的に描かないで行動から匂わせたりと、上手いです。

後半からは息を呑む展開で、ほんと読ませられました。ほとんど忘れかけていた頃に「あ! この人!」という展開もうなりました。時間の異なる平行世界ができるので頭がこんがらがりましたが、タイムリープものなのであまりそこは考えても仕方ない感じですね。辻褄はあってます。

智也の行動と成長、2人の「栞」の想いも、くぅうと最高に惹かれるものがありました。

★★★ Excellent!!!

 2年前の8月、何らかの事件に巻き込まれて命を落とした元カノを夢に見た主人公・智也は、その事件の起こる1か月前にタイムリープしてしまいます。
 時間をさかのぼったのには何か理由があるはずだからと、事件を未然に防ぐために改めて元カノ・栞との夏の1か月間を過ごし直すという物語です。

 あまり他人に関心が無く人間関係に怠惰だった智也が、その1か月の間に栞と向き合っていくことで人間的に成長していき、そして栞のことを本気で好きになる過程が共感深いです。
 メインテーマは事件を防ぐというサスペンス寄りの内容ですが、しかし思春期の男女が付き合う上での甘酸っぱいイベントも多くあってとても楽しめました。

 また情景描写がとても丁寧で、舞台になっている山口県の夏の魅力がとてもよく伝わります。読んでいると早く暑い季節が来ないかなと感じてしまうほど。

 ノンストップで読めるとても良い小説だと思いました。
 青春系小説が好きな方にオススメです!