第935話 悪夢
記憶の中に囚われたまま、私はかすかな光を求めて手を伸ばす。
いつの日の頃からだろう。陽だまりの色は、私達の美しい透き通った町を照らす。
君を連れ出して町を出て、氷の結晶を洞窟の中に見に行った帰り、私達は町の方からの異変に気付いた。
――町が燃えている。
火事?
……いや、それにしては規模が違いすぎる。町全体が燃えている。
私は家族の安否を確かめる為に、慌てて戻ろうとした。しかし彼は、私の手を掴んだ。
「ダメだ。危険すぎる。あの炎の中に行くなんて無茶だ」
それでも私は――
私は彼の手を振り切り、炎に包まれる町の中へと入っていった。
そして自分の家が全焼しているのを目の当たりにして、その場に泣き崩れた。その時だった。焼けた家の屋根が、私に向かって真っすぐ落ちてきた。
「危ない!!」
そう言って彼が私を突き飛ばした。
そして彼は……
燃える屋根の下敷きになってしまった。
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