第886話 学譜

圧倒的合格率で有名な塾には、秘密があるという。私は今話題の塾に取材に行った。カリスマ教師である新田先生が作ったという教材を見せてもらえる事になった。何やらたった数ページの用紙だ。

「これは?」

「学譜ですよ」

「楽譜ではなく?」

「ええ」

その学譜と呼ばれた物は、どう見ても普通の楽譜であり、おたまじゃくしが並んでいる。

「あの……私、もしかして間違えました?ここピアノ教室でしたか?」

「いいえ、進学塾です」

「でもこんなもので一体どうやって勉強するんですか?」

「まあ講義を見ていって下さい」

「は、はぁ……」

生徒達が集まり、新田先生の講義が始まった。そこには黒板とピアノ。アシスタントの女性がピアノで演奏する。

「XとYを左辺に移行して~♪分母を~♪揃えるのです~♪」

音楽に乗りながら新田先生がミュージカル調で授業を進めた。不思議だ。異常な程、頭の中に入ってくる。なるほど。これが秘密か。

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