第874話 怪盗ゴースト

長い髪を靡かせてこの街を飛び回る。彼女はスーパーマンではない。怪盗だ。ただし悪党ではない。義賊だ。弱きを助け、悪を憎む。今日も悪徳政治家が溜め込んだ裏金を盗み、それを怪盗ゴーストという匿名の名前で、貧しい孤児院に寄付したのだ。実は彼女は、その孤児院の出身だった。彼女は普段は、カフェの店員として働いている。昼間は情報収集。そして夜になると怪盗ゴーストとなり、あらゆる場所に現れる。

「さあ今日もお宝を頂くわよ」

予告状――。

今夜、絵画モネの顔を頂きに参上する。


今日も怪盗ゴーストは、街へと現れた。悪徳闇金業者が持っている世界的絵画モネの顔を盗んでみせた。

「チョロいわね」

それを闇金業者に騙されて奪われた元の持ち主に返した。

「どうしてこんなに親切にしてくれるんですか?」

男は怪盗ゴーストに訊ねた。

「私も同じだったから。奪われたものを取り返してくれたから」

「何を?」

「愛」

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