第873話 保存メール

メールフォルダの保存メールの中に、どうしても消せない思い出のメールを入れている。死んだ母からのメールだ。


「晩ご飯はカレーです。残ったら明日もカレーです」


何気ないメールだが、私にとっては何よりも宝物だ。母がこの世に存在した証なのだから。私は愛されている。唯一、私の事を愛してくれた人だ。保存メールを読み返すと、自然と涙がこぼれてきた。


「お母さんっ……ううっ……ううっ……ぐすっ……」


死んでしまった人は生き返らない。もう二度と会う事はできない。その温もりも二度と味わう事はできないのだ。


ブルブルブル。新着メールが一件届きました。通知が来た。私はメールを開けた。するとそこには……


「何泣いてるの。しっかりしなさい。あんたはこれから前を向いて生きていかなくちゃいけないの。頑張りなさい」


余命三ヶ月だった母からの最後のメール。それは予約送信で死んだ母から送られてきたメールだった。

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