第827話 季節外れの雪合戦
病室のベッドの上で一人の男の子が寝ている。彼は昔から体が弱く、入退院を繰り返している。
「外で遊んでみたいな」
彼は母親にぽつりとつぶやいた。
「何をしてみたいの?」
「雪合戦をしてみたい」
「そう。でも今は春だから次の冬まで我慢ね」
そう言ったが、彼の余命は残り僅かだった。次の冬までは持たないだろう。母は悩んだ挙句、決めた。そして数日後。
「ねえ。雪合戦しよう。皆集めてきたよ」
「えっ?でも雪降ってないよ」
「大丈夫。外に行こう」
母は彼を外に連れ出した。外はポカポカした陽気で、雪なんて降っていなかった。
「えいっ!!」
母が男の子に向かって投げたのは、ゴムボールを白く塗ったものだった。それを沢山、男の子の周りに置いた。男の子も白く塗ったゴムボールを投げて応戦する。
男の子に笑顔が戻った。久しぶりに見た笑顔だ。
はしゃぐその様子は、春に訪れた雪合戦そのものだった。
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