第747話 桜の木の下で
病室から見る桜は、今年で何度目だろう。
「ねえ。桜見に行こうよ」
お見舞いに来た彼女が僕を誘う。
「いいけど……」
車椅子に乗り、外に出る。
「良い天気だね。お花見だね」
「うん」
「気分転換になったんじゃない?」
「まあね」
すると彼女は、大きな桜の木の下に座り、沢山の付箋が付いた本を読みだした。僕の病気に関する本だ。彼女は僕の病気について勉強して、一生懸命知識を得ようとしている。
「難病なんだよね。でも治療を続けていけば症状は少しずつ抑えられる」
「うん」
「ああ、桜さん。どうか病気を治してください」
彼女は、手を叩いて桜の木に祈った。
「神社じゃないんだから」
その瞬間、風が吹いて桜の花弁と共に彼女の持つ本の付箋が沢山飛んでいった。
「あっ……付箋が……」
翌日、僕は奇跡的な回復をした。どうやら飛んでいった付箋は、桜からもう本はいらないよというメッセージだったように感じた。
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