第666話 芽生える感情

嫁が妊娠し、俺に子供が出来た。だが俺は子供を愛せないでいた。子供を授かった事へのプレッシャー、責任感の方が強くなり、子供を愛せないでいるのだ。これから俺は、子供の為、嫁の為に生きていかなくてはならない。家族を守っていかなければならない。守らなくてはならないものが増えた。そんな中、嫁のお腹の中にいる子供は、俺の覚悟を待つ暇もなく、毎日すくすくと育っている。

ああ、俺が親父になる。いいのか?本当に?俺なんかが親父になっていいのか?

毎日、そうやって自問自答する。俺自身、まだまだ子供ではないか。こんな奴の元に生まれてくる子供は、可哀想な子なのかもしれない。


それからまもなくして嫁は、いよいよ出産になった。俺は病院にかけつけて見守った。


「オギャー、オギャー!!」

「おめでとうございます。元気な男の子ですよ」


ああ、なんて可愛いんだろう。その姿を見た瞬間、俺は父になった。

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