第653話 特別性スーツ

新しいスーツを買った。このスーツは特別性らしい。特別性の意味は分からないが、特別性らしい。新しいスーツを着て出社すると仕事にも気合が入る。私はバリバリ仕事をこなしていた。


「おはよう。それ新しいスーツ?」

「はい」

「しかも特別性だね」

「ええ。よく分かりましたね」

「だってどう見ても特別性じゃないか」


見た目は普通のスーツだ。何が特別なのか私は分からなかったが、知らずに買ったのかと思われるのが恥ずかしくて聞けなかった。取引先に行った。


「おお、特別性のスーツですね」

「え、あっ……はい」

「良い物を買いましたね」

「ええ。まあ」

「やっぱり特別性のスーツは、見た目が良いですな」

「ありがとうございます」


会う人、会う人皆が私の特別性スーツを褒めてくれる。それ、特別性だねって。


何?何なの?

特別性って一体何なの?


私の疑問は、ずっと頭の中で残ったままだ。誰か教えて欲しい。

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