第625話 迷宮日誌

ここに閉じ込められてどれくらい経つだろう。私にはもう時間の感覚はない。数日しか経っていないのか。それとも数年いるのか。しかし確実に言える事は、今の私の体が異常だと言うことだ。体感では、確実に数日は経過しているにも関わらず、何も口にしていないのに空腹感がまるでない。そしてこの空間。あまりにも広くて複雑な経路をしている。どこまで進んでいっても先があり、終わりが全く見えないでいる。このままでは、私はおかしくなってしまうだろう。誰かが私と同じようにここに辿り着いてしまったその時の為、私は私自身の体験を記録として残そうと思う。次の誰かの為に。そうだな、この日誌の名前は、迷宮日誌だ。迷宮日誌をつけ初めてから体感で三日。やはり空腹感はない。時間の感覚が現実とかけ離れているのだろうか。今日も歩く。どこまで行っても壁で覆われた迷宮をひたすら歩き続ける。私はどこで生まれ、どこへ行くのだろうか。

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