第610話 背後霊コミュニケーション

引っ越してきて1カ月。どうやら私の住むマンションには、幽霊が出るらしい。しかし一度も怖い経験をしたことがないし、まあ大丈夫なのだろう。ある日の事だった。隣の部屋に住んでいる私と同い年くらいの若い女の人が、家を訪ねてきた。


「すみません。カレー作りすぎちゃって。よかったら食べませんか?」

「えっ!?カレーですか!!私大好物なんです。ありがとうございます。あの、よかったら中でお茶でも飲んでいってください」

「ありがとうございます」


この人とは仲良くなれそうだ。隣人と話せる絶好の機会だ。私はお茶を入れて彼女に出した。


「あのっ……あと2つ、お茶をカップに入れてもらえませんか?」

「えっ?」

「だって……私の背後霊とあなたの背後霊。2人も仲良くなりたそうなんですもの。話したいことがあると思います」


私と彼女。そして私の背後霊と彼女の背後霊。奇妙な4人での会話は、意外にも楽しい時間となった。

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