第594話 誕生日プレゼント

そろそろ誕生日だ。どうせ父は、いつもどおりアレをくれるのだろう。誕生日になってくれたのは、木彫りの虎の置物だった。またか。私はうんざりした。父のプレゼントを選ぶセンスのなさに呆れて言葉も出ない。去年の方がまだマシだった。去年は木彫りの丑の置物だった。私の部屋には、木彫りの動物の置物が毎年増えていく。それも干支の順番通りにだ。全く意味が分からない。そして13歳の誕生日になった。父がくれたのは、綺麗なネックレスだった。突然の事で私はビックリした。そして父は口を開いた。


「お前に今まで干支の置物をあげていたのはな。お前が大人になってからでも父さんが作ったものをそばにおいておいてもらえると思ったからだ。今までつまらない物をあげて悪かったな。これからはお前の好きな物を買ってやる」


二十年後、父は死んだ。

私の手元に残った干支の置物は、私にとって大切な物となっている。

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