第572話 空腹住職

近所にある古い寺。

そこの寺は、全く改装される事もなく、今日までやってきた。寺は古ければ古いほど味があるように思えてくるけど、さすがにここまで古いとちょっと可哀想に思えてくる。


私の家は仏教だ。昔からこの近所にある寺のお世話になっている。お盆の時期には、家まで来てくれたお坊さんが仏壇にお経を読んでくれる。そしてありがたい説法を説いてくれる。


しかし今年のお盆は、様子が違った。何やら青白い顔をしたお坊さんが、お経を読んでいる最中に倒れ込んだ。私はあわてて介抱しようとする。


「だ、大丈夫ですか!?」

「何か食べる物を……」


訳を聞くとお坊さんは数日ご飯を食べていないらしい。寺の経営が厳しいのだと言う。ご飯を食べさせてあげると、お坊さんは元気を取り戻した。


「ありがとうございます。このように人助けを咄嗟にできる方は、きっとご先祖様も見ていることでしょう」


お坊さんは、説法を続けた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る