第488話 恋するラテアート

またあの子が来ている。僕がアルバイトとして働くカフェに、とても可愛いあの子が来ている。


彼女はいつも一人だ。一人で来てケーキと珈琲を飲んで読書をして過ごしている。どうにかして彼女と仲良くなりたい僕は、僕なりのアプローチをするのだった。


「どうぞ」

「えっ?頼んでませんけど」

「いえ。僕からです。カップチーノです。僕のオススメです」


僕は彼女にカップチーノを奢った。ラテアートでハートを描いて。


「ありがとうございます」


彼女が店に来る度に僕は、カップチーノにラテアートでハートを描いて遠まわしに彼女に愛を伝え続けた。


そしてそれもお馴染みになってきた時の事だった。


「カップチーノです」

「ふふっ……。また奢ってくれるんですか?」

「はい」

「今読んでる本がね。恋するラテアートって小説なの。それに出てくる主人公があなたにそっくりで面白くて」


少しだけど彼女との距離が縮まった。

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