第422話 最後の一球

父の仕事の都合で転校する事になった。野球部の皆が俺に寄せ書きを書いた色紙をプレゼントしてくれた。

「三橋。全国大会で必ず会おう」

「おう」

「途中で負けんじゃねぇぞ」

俺のポジションは、キャッチャーだ。まあ正直な話、ピッチャーのような花形のポジションではないし、勝てるかどうかは転校先のピッチャー次第だ。

「おい、三橋」

声のする方を振り返ると、そこには俺とバッテリーを組んでいた筒井がいた。

「どうして転校する事、ギリギリになるまで黙ってたんだよ。言えよな」

「悪かったよ。お前の調子が悪くなると困るから黙ってたんだ。お前の弱点は、ちょっとした事ですぐメンタルに影響される事だからな」

「うるせぇ。この野郎。おい、ちょっと最後に俺の球受けろ」

筒井は、剛速球のストレートが武器だ。渾身の一球を受けた。

「俺の気持ちだ。この感覚、忘れんじゃねぇぞ」

グローブ越しに受けた手は、ジンジンしていた。

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