第381話 平和狸伝説

平和狸伝説。それは昔、人々の間で起きた争いを狸が止めて回ったという伝説の事だ。私の町は、平和狸伝説の始まりの土地である。町には、平和狸の住処である洞窟があり、洞窟の前には平和の象徴として平和狸の銅像が建てられている。町の観光地のひとつである。私は夏休みの自由研究として、この平和狸伝説について調べてまとめる事にした。図書館で古い資料を調べてみると、この平和狸伝説に出てくる狸は、とにかく人間が好きなのだとよく分かる。かつてこの町の領主は、横柄な男であり、一生懸命作った作物の大半を領主に収めなければならなかった。おかげで民達は、常に腹を空かせていた。それを見かねた狸は、夜中にこっそりと民達の家の前に食べ物を置いていくのだった。そして狸は、鬼に化けて横柄な領主を村から追い出して村は平和になった。鬼が出た。だがそれは狸の仕業だ。民達は皆、それを知っていたのだ。きっと狸の仕業に違いないと笑うのだった。

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