第367話 壁

どうして俺がこんな奴と組まされるんだ。俺は刑事だ。今、相性最悪の若い相棒と一緒に張り込みをしている。


「来たぞ。奴だ。やはり情報通り、奴らの潜伏場所はここだったか」

「ふわぁ~。眠いなぁ~」

「おい、あくびなんかしてる場合か。たるみすぎだぞ」

「田所さんこそ、緊張しすぎですよ。リラックスしなくちゃ犯人逮捕なんて出来ませんよ」

「お前はリラックスしすぎだ。もっと緊張感を持て。よし、乗り込むぞ」

「はいはーい」


犯人のアジトは、高い壁で覆われていた。


「この壁を乗り越えなければならないのか。よしっ、登るぞ」

「田所さん、何言ってるんですか。壁は回り込んで避けるものですよ。乗り越えるものじゃありません」

「いいや。人生の高い壁は、乗り越えていくものだ」

「熱血スポ根漫画の見過ぎですよ。効率良くいきましょうよ。ね?」


人生において高い壁は乗り越えるものだ。

……えっ?

今時は、違うのか?

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