第341話 踏切の向こう側

踏切を待っていると、なんだか別の世界に迷い込んでしまうような……。

そんな気がする。今日も私は、学校帰りの夕方、踏切が鳴り終わるのを待っている。踏切の向こう側を見る。だが今日は、いつもと様子が違った。


「えっ……あれって……わ、私?」


踏切の向こう側に立っていたのは、私だった。そして私の方を真っ直ぐ見つめている。踏切の向こう側の私と目が合った。踏切の向こう側の私の瞳の色は、夕焼けよりも赤い緋色だった。

電車が通り過ぎていく。電車で踏切の向こう側が見えなくなった。電車が通り過ぎると、踏切の向こう側の私はいなくなっていた。


「時が来たの。あなたの力が必要。私と来て」


後ろから声がした。振り返ると緋色の瞳の私が立っていた。


「どこへ?」

「異世界へ」


気が付けば私は、知らない土地に立っていた。私は、私に異世界へ召喚された。この世界の私を探す私の旅が始まった。緋色の瞳を持つ私を。

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