第323話 あきら、あきらめるな
崖の下は、深くて底が見えない。俺は親友のあきらの手をなんとか掴んでいた。
「くっ……あっ……ああっ……。あっ……あきらぁ……手を……伸ばせ……」
「くっ……うっ……ううっ……。ダメだ……。力が……。あがれない」
「あきらぁ……」
「みつ……ひこ……」
「頑張れ……あきらぁ……」
「俺は……もうっ……だめだ。手を……放せ……。お前まで……落ちてしまう」
「あきらぁ……。そんなことできるわけないだろう。いいから手を……伸ばせ」
「俺はもうっ……ここまでだ……」
「あきら……あきらめるな……」
「今のは、俺の名前を言いたかったのか?それとも、あきらめるなって2回言ったのか?……あきら、あきらめるなって」
「今!?それ今それ言う!?この状況で!!」
「フッ……どっちでもいいか。じゃあな」
あきらは手を放し、深い崖の下に落ちていった。
「あきらぁあああああああ、あきらめるなぁああああああ」
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