第237話 満月の夜
満月の日は、出産率が上がるらしい。そんな話を聞いたことがある。そんな事がありえるのかどうかは、私は知らない。だが出産とは、とても神秘的な事だ。そんな関係性があったとしても何の不思議もない。
満月の夜、私は生まれた。私が自分の体の異変に気付いたのは、15歳の十五夜の日だった。綺麗な月だ。あの月に触れてみたい。そう思ったら体が宙に浮いた。空を飛べた。私は、どんどん月に近づいていく。
「綺麗……」
それと同時になぜか、月に帰らなくては……と思った。私の故郷は、地球ではなく月なのだ。なぜかそんな確信めいた事を思った。
「茜?茜?聞いてるの?」
「…えっ?ああ、うん」
私の体は、ここにあった。
でも意識は間違いなく、月を目指していた。なんだかとても怖くなった。それは、今まで生きてきた自分の人生を否定してしまうようで。
今日は満月。
私はまた月に呼ばれているような気がしている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます