第201話 後ろ姿美人

数日前、歩道を歩いていた女性が大型トラックの下敷きになって犠牲になるという大きな交通事故があった。その事故の処理は終わり、道路はすっかり綺麗になった。道路には、花瓶に入った花が置かれている。


僕は塾に行こうと歩いていた。僕の前を歩いていたのは、サラサラの長い髪をした女性だった。そしてスラッとしたモデルのようなボディーライン。後ろ姿しか見えないけれども、彼女は間違いなく美人だと思う。とても綺麗だ。その時だった。彼女の持っている鞄から財布が落ちた。


「あっ……!!」


僕は思わず声を出して財布を拾った。

そして女性に声をかけた。


「あの!!財布落としましたよ!!」


女性は後ろを振り返って――


「ありがとう」


そう言って微笑んだ彼女の顔は、目、鼻、口の顔のパーツの位置がぐちゃぐちゃになった酷い顔だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る