第183話 向日葵畑で君を待つ

誰かを愛する気持ち、そして誰かに愛される気持ちを持ったのは、あの時が初めてなのかもしれない。

親から虐待を受けて児童養護施設で暮らす事になった僕は、そこで初めて君と出会った。君も親から虐待されて施設に入ったと聞いた。僕も君も親から愛されなかった。自分はこの世に必要ない存在なんだと思っていた。愛を知らなかった。君と一緒に過ごしていくうちに、僕は君の事が好きになった。施設には、向日葵畑がある。夏は沢山の向日葵が咲いていて、施設の子供達を楽しませてくれる。ある日の事だった。君を養子に迎えたいという人が現れた。君は、僕よりも先に施設を出ていった。

「この向日葵畑をずっと守って欲しい。いつの日か必ずここであなたと再会したいからその目印に。再会できるその日まで」


それから8年。


「花言葉は、私はあなただけを見つめるか…」


向日葵を見ながら独り言を呟く。


「久しぶり」

大人になった君がいた。

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