第168話 林檎飴

病弱で何年も入院している私は、病室から見える打ち上げ花火を寂しく見ていた。


「夏だね」


同じ病室に入院している二歳年上の男の子が話しかけてきた。


「うん。夏だね」

「ねぇ。今からこっそり病室抜け出さない?お祭り行こうよ」

「えっ。だめだよ。先生に怒られちゃう」

「だって毎年見てるだけじゃつまらないだろ?」

「それは…そうだけど…」

「屋台で食べ物買ってさ、近くで花火見ようよ。近くで見たら絶対綺麗だよ」


彼に誘われ、私達は病室をこっそり抜け出した。


「凄い人の数だ。離れちゃだめだよ。手繋ごうよ。うーん、何買おうか?」

「まだあるかな?林檎飴」

「今日の事は、二人だけの秘密だよ」


ちょっとだけ悪い事をしているドキドキする気持ちと、男の子と手を繋いでいるドキドキ感。

これはどっちのドキドキかな?

林檎飴をかじりながら、病室で見るよりも近くて大きな花火を二人で手を繋いで見ていた。

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