第59話 鶴は千年。亀は万年。僕は……

「鶴は千年。亀は万年。僕は残念。どうも、小太郎です!」


お笑い芸人である俺は、登場する時の挨拶の掴みのネタとして、いつもこの挨拶を使っている。いつか売れて大勢のお客さんで会場を満員にして、大爆笑してもらい、人々を笑顔にする。俺が俺の夢だ。

今日も客は誰もいない。それでも俺は、舞台の上に立ち続ける。


「鶴は千年。亀は万年。僕は残念。どうも、小太郎です!いやー、残念っていうのは、僕の顔の事なんですけどね。見てくださいよ、ほら。ね?そんなにイケメンじゃないでしょう?でもね、僕も頑張って生きてるんですけど――」


今日もお客さんは、誰も入っていない。このデパートの屋上でライブし続けてどれくらいが経っただろう。


鶴は千年。亀は万年。

僕は十万年。誰もいないデパートの屋上でお笑いライブを続けている。

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