第578話 av

山岡は楽しそうに「30男だったら・・・勢いでやっちゃうかも」



友里恵は「いやらしーなぁ」と、ちょっと呆れながら13号車へ。

ほんのちょっと新しくなっていて、座席の布が個室B寝台の布地と同じ

黒い生地に細かいマスコットの模様だったり。

「でも、そうだよねホント。学校の教師も多いね、そのくらいの年で不祥事」


山岡は頷く。「それはまあ・・・・・今はそういうのも居るね」



友里恵は前を向いたまま「そーだよぉ、ナに考えてるんだか

あいつら。教師の癖に。

ウチのバス会社にも居たけど、前の所長。

ガイドに手出して、籍入れないで。

まーフシダラだこと」



山岡は「うん、僕もバス乗ったし、一時」




友里恵びっくり、振り向いて「そーなんだぁ。どこの会社?」


山岡は「うん、小田急にも居たし・・・東海にも。伊豆箱根にも。富士急にも」



友里恵「ベテランさんだぁ。」と、にこにこ「観光?」




13号車は、割りと新しい。人はそこそこ乗っている。


山岡は「いや、路線。貸切も単発では乗ったけど、泊まりがねー」





友里恵は楽しそうに「そうそう!うちの営業所でも未婚の若い女の子は

泊まりに出さない、ってキマリがあって」



「ああ、30男がいるからねー。勢いで・・・」と、山岡。



友里恵「うん、所長だった岩市も・・でもアイツ免許ないのになぁ・・・・ねぇね、20男だと?」



山岡は「もう、ウィルスみたいなもんだね。」



あはは、と友里恵も笑って。13号車のデッキ・ドア。

なぜか青く塗られている。

「でもね、既婚でもダメなんだって、最近は。野田さんが言ってたなぁ。」





山岡は「ああ、バレなきゃいい、って・・隠れてやっちゃう。」




友里恵は振り返って「そーなんだよ、何考えてんだか所帯持ちの癖に」と。

デッキドアをあけてたので、アタマが当たって




ゴン




山岡は「だいじょぶか?」と、笑いながら友里恵のアタマを撫でて「凹んではいないなあ」



友里恵は「あー、いてぇ。」と、自分のアタマをさすって。


すりすり。



「そーいう男も女もさぁ・・・バイキン並みだなぁ」と、笑って。


13号車デッキ。


トイレの扉もなぜか青く塗られていて。



友里恵は「ねぇねぇ、東海の女のコってかわいい?」


山岡は「うん、海辺だからね。素朴なビーチガールっぽいのが多い。

けど、お局さまがいて・・・、」




友里恵「うちにもいるんだ!それ。うーん。どこでも同じかぁ。

ひつじみたいな顔してるんだけど。


それでねー、事務のおばさん。中島さんって言うんだけど。

これが、いい人なんだ。怒ると怖くて。


マツコデラックスみたいに太ってて。


このマツコがねー、睨み聞かせてるんで

そのヒツジもね、隠れてこそこそ」





山岡は「なんかソーゾーできるなぁ、そういうの。東海にもいたなぁ。

伊東営業所、って言うか本社の、なんか、目が半びらきのおばさんで。


新人研修の時、制服の採寸するんだけど。

運転するから緩いの、って頼んだら


「見ためもダイジです」なんて。



安全第一じゃんねぇ、って。つっかえしてやったけど」





友里恵は、アハハ、って笑って「いるいる、そーいうの」と、うなづきながら


なぜか青く塗られている連結器ドア、やっぱり片板ガラスで

アミアミがステンレスに入ってて「網タイツみたい」と、友里恵。



山岡は「昔流行ったねぇ。あんまり好きじゃないけど。


♪これがアイ

キットあい♪


みたいなやつ。



脱がすと網目がついてたりして。」





友里恵は「やだぁ、脱がしたの?」とか、楽しそうに。




よっこいしょ、って、扉のドアを重そうに。


アルミのレバーが付いてるんだけど、磨り減ってテカテカになってる。

その上に錠前の鍵穴。



がっちゃん。



レールの上を滑車が滑って。


鉄の扉が開く。




山岡は、まさか・・・と。笑いながら「でも、脱がしにくそうだアレ」



友里恵は「引き裂いたりして」と、ちょっとイタズラっぽく。



山岡は大笑い「AVだよそれ。あ、デモ網タイツは裂けないなあ」とか。



連結器ドアを開けた向こうは普通のB寝台14号車。

素っ気無いアルミのごみばこ、白い瀬戸物の洗面ボウル。

懐かしい水のみもあったり。



プラスチックのコップが、洗面ボウルの横に逆さに引っかかってて。



「外国人は不思議がるらしいね。コレ。盗んでいかないのが」と、山岡。



友里恵は「外国ってそーらしいねぇ。観光バスのお客にもいたなぁ。

フリードリンクを勝手に持って行くの。」


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