第536話 USA

♪~ハイケンスのセレナーデ~♪



ーーつぎは、うさ、につきますーー


と、車掌さんの簡素なアナウンス。



この列車で宇佐で降りる人は、まずいないので。




友里恵は「ウサちゃん」



由香「ミッフィーとか」



友里恵「にあわねー」



由香「うるさい」



菜由「なんかさ、パン買うともらえるとか。エコバッグ」




友里恵「主婦ー」




菜由「だって主婦だもん」



愛紗「確かに」



パティ「主婦っていいですね、なんとなく。のーんびりお昼寝して

お洗濯して。お買い物、とか。」




菜由「うん。うちはフタリだけだから、いまのところ自由だけど」


とか言いながら。




友里恵「宇佐ってUSAって書くでしょ」



パティ「ハイ。アメリカ合衆国にちなんでいろいろ・・・・ふるーい神社もあるんです。

宇佐神社」




由香「なんだっけ、ブルース・スプリングスティーン」



友里恵「懐かしいなぁ。ボーン・イン・サUSA、Iwas」



由香「エイゴわかるじゃん」



パティ「エイゴわかりませーん」



理沙「その顔で言うと面白い」



菜由「確かに」



車窓は、だんだん日暮れから日没になってきて


ロビーカーの、大きな窓もだんだん、日暮の風景。



ごはんと、お刺身、かき揚げ、てんぷら。

みんな食べちゃって、大分むぎ焼酎だけが残る。



友里恵「大抵そうだよね」



由香「呑む人がいると別」



友里恵「なにを?」


由香「酒」


友里恵「ひっかからなんなー」



由香「なれてるから、あんたのパターン」



友里恵「あんたに、あげーたぁ」



由香「なにを?」




友里恵「そのテに乗るか」


パティ「ハハハ。あ、宇佐駅ですね」




意外に大きな駅で構内も広い。宇佐神宮への参拝に・・とか

そういう用途もあったのかな、と思う。



友里恵「お参りってねー。むかーしは全国から歩いてきたって言うから。

お金が足りなくても、門前だとなにか施してあげたりとか」



由香「寅さんだ」




友里恵「いょーぉ!」



由香「はまだ16だから」



友里恵「それも古い」



パティ「ハハハ」



菜由「なんだっけ、誰かの奥さん」



愛紗「それはそうだけど」



理沙「咄嗟にコトバでないってあるねー」



パティ「ハイ」


友里恵「健忘」



由香「雷門」



友里恵「ダレそれ」



由香「偉人」



友里恵「だったかなぁ」



ロビーカーで話しているうちに、列車は宇佐駅に着いて。

ホームから乗ってくる乗客は居る。けれど

降りる人はいない。



友里恵「お参りかなぁ、やっぱり」



由香「おばーちゃんヒマだから」



理沙「パティはクリスチャンなの?」



パティ「特に信じてないですー」



友里恵「十字架のペンダントとか似合いそう」



パティ「割りとありそうですね。銀のとか。」


友里恵「少女の白い胸元が恥かしさに染まり・・その、銀色の十字架が輝き

悪漢はそこで、思いとどまるのであった」



由香「なんか、ソッチ小説」



パティ「アナタハ、カミヲシンジマスカ?」



理沙「なんか、そこだけカタコト日本語」


パティ「ニホンゴ、ワカリマセーン」



由香「宗教の勧誘だなぁ」


友里恵「自転車乗ってくるお兄さん。よく来たなあ。バスガイドの詰め所とか」




菜由「ああ、いたねぇ。なぜかスポーツ自転車で。小さい紙のパンフレット持ってきて。

ナントカ教とかの」




愛紗「ヘルメット被ってて。刈上げ頭で青い目で」


パティ「ニホンゴ、ムズカシイデス」



理沙「ハハハ」




停車時間はゆっくり。その間に白い電車特急「ソニック」が傾いて駆け抜ける。

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