第522話 trank

大分駅の温泉で、さっ、と流した4人。



友里恵は「のんびり入りたかったなあ」



由香「今度な」



菜由「また、じゃないぞ」



友里恵「読まれてるなぁ」


愛紗「さっぱりできた」



とことこ・・・・歩いている1番線ホーム。



16時20分。



パティは「そろそろ・・・西鹿児島から来ますね「富士」」



友里恵「何番線?」



パティ「えーと、3番線」




菜由「さすが」



パティ「ハイ。1番が下り特急到着、2番もそうなのです」




友里恵「詳しい」



由香「だって地元の駅だもん」



友里恵「そっか」




とことこ歩いて、うどんスタンドのパットさんのとこに来た友里恵「あ、ありがとーございま


す」


と、カウンター越しにパットさんに。





「冷えてるよ」と、パットさん。にこにこ。



その、スタンドの隣に駅事務室の入り口があって。職員が出たり入ったり。


うどんを食べたり、おにぎり、お稲荷さんを食べたり。



友里恵は「忙しそう」




由香「夕方だからね。バスもそうだったじゃん。路線とか」


愛紗はふと、思いだす。

思いだしても辛くないけど。


わたしは、なにを考えていたのだろう?


そう思うくらい、旅に出る前の自分は、別のひと・・・みたい。






♪メロディ♪



ーまもなく、3番線に・・・寝台 特急 富士 号 東京行き が到着致します。 --



と、録音の、明るいお姉さん声がホームに響いて。




友里恵「もう来たんだ」




パティは「出発は50分頃だから、しばらくありますね」



由香「ずっと待ってるの?」




パティ「はい。大分で7両連結して、東京へ行きます」



菜由「そうそう。鹿児島に来るのはそのくらいの長さだった」

と、記憶を振り返る。




海辺に居ると、築堤の上を機関車に引かれた紺色の列車が

ごっとん、ごっとん・・・と、重々しく通過していくのを見た記憶がある。


夜行列車、とは言えない、昼間だった。


東京って遠いな、と思った・・・・。



今は飛行機ですぐ、だけれども。



3番線のホーム先頭には、専務車掌さんらしい

白いスーツに帽子の人が、トランクをホームに置いて。


四角い黒いトランク。



愛紗は思いだす。「あれは、昔は茶色いトランクで、紙みたいな。

鍵を開けると、ばねで錠前が飛び上がるのが面白くて

ボタンを押して遊んだ・・・」


なんて思う。




・・・・誰の?



なんて思うけど、その人は誰だったか・・・・?思い出せない。




菜由は「じゃ、行こうか3番線」



友里恵は、大分駅のホームを振り返って「あー、お別れだ」と、ちょっと淋しそう。



由香は「こんど、こようね」と。友里恵の肩を叩いて。 ぽん。



友里恵も、うん、と頷いて。




エスカレータから地下道に下りた。




地下道は音が響いて、いろんなアナウンスの音が混ざって聞こえたり。



天井から下がってる列車案内が、


特急ソニック30号   とか


普通 幸崎        とか。



久大本線は6番の方なので、遠くのほう。



もう、そっちへ行かないんだな・・・・なんて、ふと友里恵は思ったり。




土曜なので、楽しそうに話している学生さんたちとかが行きかう地下道。


ちょっと湿っぽくて、両脇にある溝に水が垂れていたりするけど

壁には電光サインがついていたり。

壁は明るい色に塗られていたりする。


東京駅より、よっぽど新しく見えると愛紗は思う。



2・3番線ホームへの階段を昇る。



「エスカレータないんだ」と、菜由。



「おばさーん」と友里恵。



菜由「同い年じゃん」



由香「ま、そうだけど」



パティ「駅を高架にするので」



友里恵「そーなんだ。もったいないね、なんか」

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