第501話 pr

でもまあ、弘前に行くって言っちゃったし・・・と、愛紗は困惑する。

迷うって言うか・・・回りに優しく、って思うがあまり。


全部捨てちゃえ!って、あのプリンセスみたいには出来ない。

愛紗はあくまで、フツウの子。


優しくされたら、優しくしたい。そういう子でありたいと思う。



理沙は、愛紗の表情を見て「弘前はいいよ、別に。アルバイトだしさ。手職って。」


愛紗も、そう言われても困ってしまう。ちょっとした思い付きで

機関士になれたらステキ。そう思っただけだ。


そんなに深く考えたワケでもない。



友里恵が助け舟を出す。「まー、いいじゃん?考え込んでも仕方ないよ。

旅行すると思ってサ、青森行ってみて。

使ってくれるかもわかんないし。」



由香「オマエが旅したいんだろ」




友里恵「それもあるけど」と、笑った。




パティ「青森行きですかー、いーですねー。どうせなら函館あたりまで・・・」



菜由「あ、いーねえ。トラピスト修道院とか。函館山の夜景とか」



理沙「いいなあ、行けたら。ホント」



愛紗は、どっちかと言うと・・・旅行の方に興味が沸いて来て(笑)。


「友里恵ちゃんの旅番組、いいかも。行きたくなる」




友里恵「ひとりで行っちゃいやー」




由香「アホ」



友里恵、ハハ、と笑って。




パティは「みんなで行くんでしょ?」




友里恵「あ、うん・・・そう。そうだね」



由香(^^;





♪ぴんぽーん♪



ーまもなく、大分行きが参りますー


と、カンタンなCTCアナウンス。



優しげなお姉さんの声。





伯母さん「来るよ。2番線」



上りだから向こう側



愛紗は「じゃ、行くね、伯母さん。後で電話するから」



伯母さんは「いいよ、気にしないで。いっといで。なんかあったら

帰っておいで。自分のウチだと思って」



友里恵は「あたしも帰ってくるー自分のウチだと思って」



由香「あつかまガール」



伯母さんも笑う「さ、行って」




とととと・・・・と、友里恵は跨線橋を渡って。


手を振りながら。




菜由は「いっといでー、って、あたしも行くのか」と、笑いながら

後に続く。



愛紗も、それじゃ、と。バッグを抱えるようにして。



レールが軋んで。音がする。



しゅー・・・・。かったん、かったん・・・・と、黄色いディーゼルカーが来る。



パティと理沙は、ゆっくり。



経験上、そんなに急がなくても大丈夫だと解っている。

乗降が済むまでは、出ないのが普通。



本数の少ないローカル線の駅は、特にそうである。




対面の2番ホームに、友里恵は下りて。


ぴょん。



「なんか淋しくなっちゃうな」



由香は後からついてきて「泣くなよ」



友里恵は「うん」



由香「オマエが泣くと、伯母さんも辛い」



友里恵「♪おまえがなーけーばー♪」



とか、笑ってて。でも、なんか、涙が滲む。



黄色いディーゼルカーが、伯母さんと友里恵の間に入ってくる。



静かに。



愛紗も、階段を下りてきて。


ホントは泣きたいけど・・・・泣けない。


友里恵ちゃんもいるし。

そうやって、がまんする子。


ずーっと、そうだった。


どっかで爆発しちゃうかも・・・なんて思ってたけど


TVで見たプリンセスみたいに、全部いらなーい、なんて

我侭は言えない。


あんなふうにできたらいいなあと思った。


好きな人の為・・・なんて、思い込めたらいいけど

そんな人もいないし。



「あの子も、誰だって良かったんじゃないかなあ」なんて、ふと思う。」

愛紗も、18歳の頃、深町に・・・そんなことをしたし

菜由もそうだったから。


深町は大人だったから、愛紗たちが困らないようにしてくれたけど。



あの子は、お父さんすら対面を第一に考えてて・・・・。

娘をひっぱたいてでも、悪い方向から引き戻す。


そんなパワーはない。



それが、あの子が頑ななワケなんだろうな、なんて・・・。

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