第488話 toro-Q

黄色いディーゼルカー、キハ125型は

ゆらゆら、揺れながら

由布院駅の構内を、大分に向かって。


運転士さんは、左側の半室、運転室の中で

半袖シャツ。


運転席は暑いのだ。冷房が独立して掛かるようになっているのは

とても良い。



理沙は思う。機関車は・・・新しいものなら冷暖房はあるけれど

DE10 1205にはないな、と。


でもまあ、それが機関車だ、と思う。



理沙は気動車の免許もあるので、どちらも乗れるから

合間でディーゼルカーに乗ったりもする。


どちらかと言うと、ひと目に晒されるのはニガテだから

「ゆふいんの森」乗務も久留米までで安心である。

博多みたいな大都会に乗って行ったら、写真撮られるし・・・。


なんて(^^)。




かたこん、かたこん・・・ゆらゆらゆれながら右カーブのキハ125。


すこし大きめの川をガーダー橋で越えて。



がごーん・・・・がごーん・・・と、大きな音が響く。



川の水は少なめで、カルガモちゃんがぱたぱた・・・水あみ。



かわいいなあ、と、理沙は思う。




構内を過ぎると、運転士はギアを固定2へ。



床下のエンジンがひゅん、と言って

車体がぴょん、と一瞬前へ出る。


トルク・コンバータ・クラッチが離れ

その時のエンジンとトランスミッションの回転差で

車体が押し出される。


エンジン回転が下がってからつながればいいのだが

この辺りは難しい。


下がりすぎると、エンジンブレーキになってしまう。


自動車の方が、ここいらは操縦がラクだ。

アクセル・クラッチ・ギアシフトが独立しているからである。



ターボ・ディーゼル・インタークーラ。250psエンジンは

からからと軽快に下り坂を走っていく。




愛紗は、後ろを振り返る。


黒い由布院駅が、少しづつ遠ざかり

右手に大きな由布岳が緑に。



さよなら、由布院。



そんな旅愁に耽る愛紗である。



大きな右カーブは、川に沿っていて。

車窓、左側には田畑の風景。

そろそろ、麦が終わって・・・田植えだろうか。

麦穂が綺麗な緑。


製材所のトタン屋根が、懐かしい。


左カーブに変わって、農道が陸橋となって鉄道を越える。

よくドラマでロケされる、この場所。


かたこん、かたこん・・・・と、ディーゼルカーは軽快に揺れながら

こんどは右の車窓に由布岳が映る。



少し走れば、南由布駅だ。



逆転機が、ふたたびつながる。


こんどは、前のめりになるように。エンジンの回転が、アイドリングから少し上がる。


固定2段。



左カーブの目前に、大きなパーキングが見えてきて。


TORO-Q,と言う看板が見える。



理沙は思う。


そうそう、アレも最初機関車で引いてて。

後でキハ2両で挟んだんだっけ。



由布院の街が、休日は込むので

ここにクルマ置いて、パーク&ライド。


ひと駅だけ、トロッコ列車・・・・。





同じ頃・・・・友里恵は駅の向こう側にいるラブラちゃんに会いに行って。



とっとこ、とっとこ。



由香は「イヌに会いに行くのに電車を遅らせる・・・(^^)。」



パティは「電車じゃなくて、ディーゼルカーデス」



由香「知ってるけど、なんとなくね」



パティ「ふつー、四角いと電車って言いますね」(^^)。


友里恵はとっとこ、とっとこ・・・・。細い道、砂利道をリュック背負って歩いて。



「リトルちゃーん」(^^)/




ばう。



ラブラちゃんがお返事。小屋の上に乗っかって、柵の上から顔だして。



赤い舌が、ゆらゆら。




友里恵がおおきなケージの傍に行くと、小屋から飛び降りて

柵の間から顔出して。



友里恵をぺろぺろ(^^)。




よしよし・・・って、友里恵はラブラちゃんを撫でて・・・涙ぐんでたり。



笑顔だけど。




由香は「よく泣くなぁ」



パティ「かわいい」




お別れ、淋しいもんね・・・・。


しばらく、そうしていたけど



由香が「ぼちぼち、行かないと・・・・」




友里恵は、落涙しながら、こっくり。「うん」




リトルちゃんは、友里恵のほっぺたをなめている(^^)。

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