第463話 ladies car

ももちゃんは、悲しそうな声を出して、きゅん、と

友里恵を見上げて。


友里恵は「あ、ごめんね。なんでもないの。また、すぐ来るからね。」


と。お肉の入ったビニール袋を持って、立ち上がる。




飼い主さんのおばさんに渡してこよう、と思っていたら

母屋のほうの玄関があいて「あら」



友里恵と由香は「すみません、勝手に。ももちゃんのおやつにと・・・」



ふんわりしたおばさんは、にこにこ。「まあ、すみませんね。ももに。たb

こんなにいっぱい。私が食べたいわ」と、にこにこ(^^)。




友里恵は「よかったらどうぞ」


由香は「バカ」



おばさんは、にこにこ「はい。お帰りになるの?」



友里恵は、こっくり。



おばさん「そうですか。お気をつけてお帰りになってね」と、友里恵に

渡されたビニール袋を持って。


「また、来てくださいね。由布院は秋もいいですから」と。



はい。と、由香もお返事をして。



堤防に上がって。


ももちゃん、ばいばーい、って、手を振って。



飼い主さんも手を振って。




振り返りながら、友里恵は歩いて。



辻馬車のお家の辺りまで来て「あー、お別れ」



由香も「なんか淋しいね」




うん・・・と、友里恵も頷いて。

下駄でカラコロ。



モザイクタイルの、エントランスの方に2人で歩いて。



夜空にお月様。


「お風呂、入ってこよっかな」






4階の回廊で、理沙は「後で、電話して聞いてみるね。3日くらいなら休めそうだと思う。

愛紗さんは明日帰るんだから・・・あさって、向こうに着くんでしょ?

青森行く日、いつ?」



愛紗は「え、えっと・・・あさっての朝、会社に言って、それから決めますけど・・・・

会社がOKだったら、少し間を置いて。

列車の予約とかもあるし」



理沙は「あ、そうだよね。今は空いてると思うけど、連休の前だし。

連休後くらいのほうが無難かなー。「あけぼの」辺りだったら

空いてると思うよ。A寝台でも。」




さすがに、理沙は詳しい。地元だし。



愛紗は「あけぼの」だと弘前に停まりますね。」





理沙は「そう。早いのは「はくつる」だけどね。

「あけぼの」のA寝台は豪華だし。

B寝台も個室があるし。


レディースカーもあるしね。」



愛紗は、つぎの旅の予定・・・みたいで

楽しくなってきた。

遊びに行くのではないけれど。



なんだか、就職はどうでも良くなってきた(笑)。


疲れているらしい理沙は、部屋で休むようで

そこで、愛紗は別れて。407号室に戻って。



ドアサインを押した。


♪おるごーる♪



菜由が、のんびりと歩いてきて


かちゃり。ドアを開けてくれる「はい」



デンワ、長かったね、と言うので

愛紗は「あ、忘れた」(^^;



菜由は「なにしてたの」と笑う。



ので、愛紗は「うん、理沙さんにあって、立ち話。

お休み取れたら青森に帰ろうかなって」



菜由は「いい人だね。それを言いに来てくれたの」



と聞いて。愛紗もそれに気が付いた「ほんと。青森の人ってそうなのかな?

深町さんも」


と言って、気がついた。



「深町さんも弘前に住んでたって。そういえば」



菜由「ふーん。深町さんに聞いたの?」




愛紗は「友里恵ちゃん」




菜由「だろうと思った。」



愛紗「なぜ?」



菜由「あの頃の愛紗、そんなオハナシなんてしてなかったもの。深町さんに」



愛紗も思いだす・・・・18歳だった頃は、恥かしくて

とても、そんな気楽に話しが出来るような・・・自分じゃなかった。



そう思うと、その頃の自分は・・恋してたのかなぁ、なんて思う。


深町に、と言うか・・・・恋に。



今は、そんなふうに思える。

その変化が、自分でも不思議だった。

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