第454話 kemu
友里恵は、ふと・・・携帯で大岡山営業所に掛けてみた。
運転課に。
「はい、運転デース」と、野田がひょうきんな声を出した。
「あ、あの藤野ですけど・・・」
と、友里恵はどぎまぎしながら、久しぶりの「バスガイド」の気持を思いだした。
愛紗は、その・・・休みの日にまで「仕事」のことを気にするのが嫌だった。
翌日のダイヤが決まっていない事が多いから
休みの日、夕方に明日の出勤時刻を聞いたり。
野田は、点呼台にある黒電話の受話器を握ったまま「おー、なんだ?旅行だろ。・・・ああ
、あさってか。アレな、キャンセルになったから、のんびりでいいぞ。月曜に
支度すれば」
友里恵は喜んだ。「え!良かったー。ほんと。」
日曜はホントは休みなのに、月曜朝にバスが出ると・・・・その支度を
しないとならない。
はとバスみたいな大きいところ、観光専業のところだと、そういうことはないけれど。
東山、大岡山営業所は小さいし、観光専業ではないから。
野田は「うん、ゆっくりしてな。じゃな」と、簡潔に電話を切った。
夜は忙しいのである。
バスが帰ってくるし、格納と言って、バスを仕舞わないといけない。
それは、指令補佐の仕事だけど、野田は自分からそれも行っていた。
仕事に責任感を持っているタイプ。
由香が「なに?」
友里恵にっこり「日曜、でなくていい」
由香も、ばんざーい「やったー」
菜由も、なんとなく・・・ガイドだった頃を思いだした。
そう、そんな小さな事でも嬉しかった。
なーんたって、休日が半日増えるのだから(今も、ガイドはそうである。観光バスは
半分自由業っぽいところがあるので。
チナミに、「路線」ドライバーはコレは今は禁止である。
24H+8Hを「休日」とするように変わった。
あの、格安ツアーバス事故からの帰結である)。
由香は「契約にするってハナシはした?」
友里恵「それはさー、月曜でいいじゃん。今は旅行を楽しもうと思って」
由香「そっか、そうだね、ワリィ」と、ハハハ、と笑った。
聞いていた愛紗も、なーんとなく・・・夏休みの宿題を何もしていない8月の終わり
みたいな気分になってしまって。
由香は「愛紗も、契約にするんでしょ?」
愛紗は「うん。そのつもり!」と、わざと元気にそう言った。
普段、あんまり元気に「!」する愛紗ではないから
みんなは「無理してんのかなぁ」とも・・・思ったり。
旅の終わりは、それぞれに複雑である。
帰りたくないなー、と言うキモチ。
でも、帰った後を気にする気持。
いろいろだ。
でも、友里恵と由香、それと愛紗はそれぞれ・・・考えが決まった。
もともと友里恵は、親友・由香と同じ仕事にしようと思って
わんこのナース、の仕事をせずにガイドになったんだから
一緒に、もっといい仕事が出来れば、それでもいい、そんな風にも思ったのだろう。
なんたって、ガイドって結構3Kである(笑)。
レストランに入ると、奥の方の席に招かれて。
今宵、最後の晩餐なので・・・
ここのレストランは大抵、そういう演出がなされていて
連泊だと、同じ和食を頼んでも
同じメニューが重ならないように考えられている。
チナミに3泊をすぎると重なるが(笑)その場合は洋食を混ざると
一週間までは別の夕食が食べられる。
そんなに連泊する人?いるのだろう。KKRだし。
仕事で使う人もいるから。
長テーブル3つ。真ん中に黒いホットプレート。電気だけれども
それが3つ。
お肉いっぱい。お野菜もたっぷり。
友里恵「豊後牛、って言うんだよね」
由香「お、覚えたじゃん」
友里恵「そのくらいはね」
菜由「いつも牛ってあんまり食べないから、いいね」
愛紗「うん、ハンバーガくらい」
焼肉、と言うよりはステーキみたいな厚みのお肉が、どっさり。
プレートはあったまっていて、そこに・・・友里恵は牛の脂を乗っけて
温めて。
すこーし、ケムが出てきて。
4月だけど、冷房が掛かっている。夏みたい。
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