第422話 スパークリング

また、DF200は電気式ディーゼル機関車であり

かつてのDF50とは異なり、インバータ制御・モーターである。

無接点モータであるので、故障も少なく、出力も連続可変であるから

更に効率は高くなる。


そのように、内燃機関であるからと言って時代遅れであるとは言えない。



機関士・理沙が乗っているDE10 1205は、旧来のディーゼル機関車であるが。


九州地区では、格別電化を進める傾向であるとも言えないので

しばらくは機関車の乗務も続くか、と思えるが。


東北・北海道などでも、電化=>非電化と言う計画も存在している。



さて、理沙の運転する275列車は恵良駅を発車すると

次第に山深い路線になり・・・小さなガーター鉄橋に差し掛かる。




理沙は、小さく汽笛を鳴らす。



ふぃ。



この、すこし甲高い空気笛は、どちらかと言うと電気機関車に近い感じで

やや、もの悲しいと理沙は思う。





鉄橋を歩いている保線・電気職員がいると危険なので

吹鳴する。


トンネルも、そうだ。



普通は列車ダイヤを持ち、数人で行動するそれら職員である。


線路の状態確認や、信号、電球交換などを、駅の間歩いて行うのである。

忘れているが、信号は電球である。


駅の間は、やはり歩く他はない。

幾つかの班に分かれて、担当する訳だ。



DE10 1205は、鉄橋を渡る。



がごーん、がごーん・・・・・。と、大きな音が川に響く。

静かな沢で、釣りをしている人が居たりするが

もう夕方なので、人影もない。




旅に向かう時、友里恵が「ゆふいんの森」車窓で

釣り人を見かけて、手を振った。


その橋である。




理沙の背中を撫でていく川風が、涼感を誘う。



鉄橋を渡ると、短いトンネルに差し掛かる。



さらに理沙は汽笛を鳴らした。



ふぃー。




ごぉー・・・・。


暗い単線トンネルにエンジンの音が響く。


メーター照明の白熱電球が、黄色く、温かみを感じる。





同じ頃・・・4号車、車掌室の洋子は

トンネルに備えて、車室の電灯を点した。

70年型とあって、蛍光灯であるところがいかにも、当時の灯りである。

白熱灯の時代からすると、蛍光灯の白い光は

新しい時代、を思わせるものであった。


が、洋子がそれを知る由もない。


今ならLED、と言うところだろうか。



車掌室の天井近くにある、黒いトグル・スイッチを上げる。

幾つか並んでいるが、それらをよく見て。



1号車がトンネルに入る前に、それを行う訳である。






ふと、洋子は

車掌室の机に乗っている「かぼすジュース」を見た。



触れてみると、まだ冷たい。・・けれど。


「飲んじゃおうかな」(^^)。


水分補給は別にいい。



キャップを捻って、ひとくち含む。



爽やかな酸味は、レモンよりもすこし長閑な感じがする。

甘さは控えめ。





「スパークリングでも合いそう」なんて、洋子はにっこり。




「あ、これ・・・でも、文子ちゃんにあげればよかった」と

飲んじゃってから気づく(^^)。










その頃、友里恵たちの乗った大分ゆきディーゼル単行、335Dは

豊後森を出発した頃。



単行なので、ふんわり、ゆったり。ゆーらゆら。



空気バネなので、ふわふわ。




由香は「このままさー、庄内まで行く?」



友里恵は「なんで?」



由香「ほら、ツケ」



友里恵「ああ、宿の?そっか、忘れてた。愛紗が先に着くから

払ってくれてるんじゃない?」




由香「そーいう時は気が回るなあ」



友里恵「へへへ」




パティは「ツケですかー

「さくら」

のママみたい」



由香「ああ、はぐれ刑事の?よく見てるなー。

あれ、大分でも夕方やってた?」



パティは「ハイ。「さくら」って、長崎・佐世保行きって

思いますけど」



友里恵「えー、鉄道ファン?」



由香「違うよ、ピンカートン様でしょ」



友里恵「でも、宮崎じゃん」



パティ「ハハハ。ピンカートンさまって、長崎のお話ですか?」



由香「さあ」


友里恵「知らないでいうかなぁ」



由香「ハハハ」







友里恵「そー。お宿のね。指宿、人吉、南阿蘇」


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